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2025.04.03

GISデータとは?自治体で導入されている統合型GISについても解説

ビジネスや行政において、GISを活用する取り組みが広がっています。GISを活用すると、当該エリアで起きている事象を大局的に捉えることができ、意思決定が迅速かつ効率的に行えるでしょう。

本記事では、GISデータの基礎知識や活用方法のほか、自治体で活用されている統合型GISなどについて解説します。GISの属性情報として分析に使える人流データ(Geo-People)についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

GISデータとは、地理情報システム上で使われるデータのこと

GISデータとは、GIS(Geographic Information System:地理情報システム)上で使われるデータのことです。GISは、家、建物、道路といった、地図に表せるさまざまな地理情報をコンピューター上で扱うシステムを指し、GISで扱われる地理情報のことをGISデータといいます。

GISでは、さまざまな地理情報を地図上に集約し、可視化できます。これらを活用すれば、特定のエリアや場所の俯瞰的な把握が可能です。ビジネスや行政といった分野では、意思決定や課題解決などに役立てられるでしょう。

GISで扱う情報

GISで扱う情報は、大きく分けて地球上での位置や形などを表す「図形情報」と、図形情報に付随する情報の「属性情報」の2つがあります。それぞれが果たす役割について解説します。

図形情報

図形情報とは、地球上での位置や形状を表す情報のことです。点や線、ポリゴン(多角形)のほか、航空写真などを用いて現実世界の地形や地物を表現します。信号を点、道路を線で表したり、建物をポリゴンで示したりするのは図形情報の代表例です。例えば、地震を表す図形情報は、震源地の位置を示す緯度・経度の座標(点)になります。

下記のような図形情報は、国家機関のウェブサイトを通じて取得が可能です。

国土地理院 基盤地図情報

国土地理院 基盤地図情報は、電子地図における位置の基準となる基盤地図情報を指し、国土地理院のウェブサイトで取得可能です。

国土地理院 基盤地図情報からダウンロードしたデータは、基盤地図ビューアやGISソフトなどで開くことにより閲覧できます。

国土交通省 国土数値情報

国土交通省 国土数値情報とは、国土計画の策定や実施を支援する目的で整備されているデータのことで、国土交通省のウェブサイトからダウンロード可能です。

行政区画や鉄道、道路、河川のほか、地価公示データ、公共施設データが提供されています。国土数値情報を利用する際は、国土交通省が定めるデータ使用許諾条件を確認し、利用規約に則って使用する必要があります。

属性情報

属性情報とは、図形情報に付随する情報のことです。具体的には、道路の名称・幅、建物の建築年・用途、階数、駅の名前・乗降客数・路線名などを指します。例えば、地震が発生すると、震源地の位置を示す緯度・経度の座標を図形情報として取得し、地震の発生日時や震源の深さ、震度、マグニチュード、津波の有無などは属性情報として取得されます。

属性情報も図形情報と同様、ウェブサイトなどを通じて取得できます。主な属性情報は下記のとおりですが、属性情報の種類によって取得先が異なるため、取得する際は下記を参考にしてください。

統計地理情報

統計地理情報は、内閣府や省庁が公表する地理情報の統計データです。独立行政法人統計センターが運営管理する政府統計の総合窓口(e-Stat)で取得できます。

統計地理情報を取得するには、e-Statの統計データのひとつである「地図」より、統計地理情報システムにアクセスします。このシステムを活用すると、各種統計データを地図上に表示した情報を利用可能です。

ジオテクノロジーズの地図データベース「MapFan DB」

ジオテクノロジーズの「MapFan DB」は、図形情報と属性情報の両方を提供しているデジタル地図のデータベースです。「MapFan DB」の地図データは年12回更新しており、高速道路や大型施設などの開設にも素早く対応しています。

図形情報と属性情報の両方を備えているため、商圏分析やエリアマーケティング、災害対策、行政支援、交通計画といった、幅広い用途に活用可能です。

ジオテクノロジーズの「Geo-People(人流データ)」

Geo-People(人流データ)」は、ジオテクノロジーズが提供する人流データです。人流データとは、人がいつ・どこに・何人いるか、どのように移動したかなどを把握できるデータのことで、属性情報に含まれます。

人流データの特徴は、人々の行動の傾向を可視化できることにあります。人流データを活用すれば、マーケティングや都市計画の策定、防災のほか、交通渋滞の改善などが可能です。

Geo-Peopleでは高精度の人流データを取得でき、地理情報や統計情報と掛け合わせることで、マーケティングにおける分析などを精細に行うことができます。

GISにおける分析の仕組み

GISでは、複数の異なる図形情報や属性情報を、レイヤー(層)で管理しています。各レイヤーには、土地や建物、店舗、人口統計などが記録されており、複数のレイヤーを重ね合わせることで同一地図上にさまざまな情報が表示される仕組みです。

■GISのレイヤー構造

GIS

この仕組みにより、データの比較や統合が簡単にでき、データ間の関連性や地域的な傾向も容易にわかるほか、特定の条件に適合する場所などを探すことも可能です。

■東京近郊の街における歩行者数の多さを色の濃淡で可視化したもの

東京近郊の街における歩行者数の多さを色の濃淡で可視化したもの。

■特定エリアの地図と定量的な情報を重ね合わせることも可能

■特定エリアの地図と定量的な情報を重ね合わせることも可能

ビジネスにおけるGISデータの活用例

GISデータは、ビジネスにさまざまな形で活用されています。ビジネスにおけるGISデータの主な活用例は、下記のとおりです。

新規出店時の商圏分析や立地調査

新規出店時の商圏分析や立地調査は、GISデータの活用例のひとつです。統計データや地図データ、人流データなどをGIS上で可視化すると、出店予定地の商圏を特定したり、売上予測を立てたりすることもできます。商圏の特性の調査・分析もできるため、出店後の戦略を検討しやすくなります。

ジオターゲティング広告

ジオターゲティング広告とは、位置情報を活用して広告配信を行うマーケティング手法のことです。GISデータを活用すると、特定のエリアに現在いる人、過去にそのエリアにいた人などの情報を取得できます。

こうした特定のエリアにいる・いた人々のスマートフォンに広告を配信したり、クーポンを配布したりすることにより、ターゲット層へのリアルタイムかつ効果的なアプローチが可能です。

OOH広告・デジタルサイネージの広告効果測定や設置位置の決定

GISデータを活用すると、OOH広告(屋外における広告全般)やデジタルサイネージの「推定広告接触者」の絞り込みができるほか、広告を確実に視認できる場所や建物を特定し、視認エリアも決定できます。視認エリアを決定したら、位置情報を持つ人流データと組み合わせて推定広告接触者数をカウントすれば、広告の効果測定が可能です。

また、OOH広告やデジタルサイネージの設置後も、GISデータと属性を持っている人流データを使えば、推定広告接触者の増減の推移、時間が経過してもターゲット層が広告に接触しているかといったことが把握でき、継続的な効果検証が可能です。

行政におけるGISの活用例

GISは、行政においても広く活用されています。行政におけるGISの主な活用例は、下記のとおりです。

統合型GISを活用した業務連携

統合型GISとは、地図データを省庁や自治体で横断的に共用できるシステムのことです。自治体などには複数の課があり、各課で地図データを使う機会がありますが、統合型GISにより地図データを統合して管理することで、各課がスムーズに利用できます。

また、複数の課が共通の地図データを活用することにより業務連携でき、行政サービスの質を向上可能です。地図データを統合管理するため、各課が個別で管理するよりも管理コストが低くなる点もメリットといえます。

個別業務GISによる専門業務の推進

個別業務GISとは、行政における個々の専門的な管理業務に特化したシステムのことです。

個別業務GISの地理情報は、固定資産、道路、都市計画、上下水道などに特化しており、個々の専門業務で使用されます。個別業務に特化することにより、個別業務の遂行がスピーディーになるといった点がメリットです。

公開型GISを通じた情報提供

公開型GISは、統合型GISによって整備された共有データをベースに、住民に役立つ情報を提供するためのシステムです。防犯や防災、医療・福祉施設といった情報を発信する目的で活用されています。

公開型GISのデータは、地方自治体のウェブサイトなどで利用できます。住民は、パソコンやスマートフォンなどから公共施設や防災などに関する情報のほか、観光情報の閲覧が可能です。

GISデータの導入事例

GISデータは、さまざまな形で企業や行政機関に導入され、利用されています。GISデータ導入事例をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

学校法人愛知大学様:イベントや祭礼時の来場者の行動を効率的に把握

愛知大学様は、「とよはし都市型アートイベントsebone」や「犬山祭」「豊橋祇園祭」といったイベント・祭礼でGISデータを活用しています。ジオテクノロジーズの人流データを活用し、各種イベント・祭礼における参加者の集積状況やその時間的変化、会場内での行動パターン、居住地の分布などを空間的に把握。これにより、イベントや祭礼が地域に与える影響を客観的に分析することが可能となりました。

また、人流データの活用により、多くの参加者情報を効率的に収集し、分析できるようになりました。今後はこのデータを活用し、イベント・祭礼時の混雑緩和や運営改善につなげる研究を進めていく予定です。

出典:ジオテクノロジーズ株式会社「「人流データ」の活用により、来場者の行動や人の動きの空間特性を客観的かつ効率的に把握することが可能に!

愛知県日進市:バス停の最適配置と住民サービスの向上に寄与

愛知県日進市では、地域の交通空白地帯の最小化に向けてGISデータを活用しました。特に、コミュニティバスのバス停配置やルートを決定・改善する際に、GISデータが役立っています。

市内を循環するコミュニティバスのバス停位置と運行ルートを見直すにあたり、各バス停の半径500m以内に居住者ができるだけ多く含まれるようにしました。

また、走行中のバスの位置情報を公開型GISにて表示することにより、リアルタイムな運行状況の配信を実現しています。GISデータを活用して住民サービスの向上を図っている好例といえるでしょう。

出典:一般財団法人全国地域情報化推進協会「地域情報プラットフォームにおけるGIS共通サービス基本提案書

GISデータを活用し、ビジネスと行政施策を最適化

GISで扱う地理情報は、地球上での位置や形などを表す、目に見える一般的な地図としての「図形情報」と、それらに付随する情報である「属性情報」の2つに大別されます。地図上に表示された図形情報と、付随する属性情報を組み合わせることにより、ビジネスや行政におけるさまざまな意思決定とコミュニケーションが、より高精度かつ効率的に行えるようになる点が大きなメリットです。

地理情報のうち、図形情報に関しては国土地理院が、属性情報に関しては独立行政法人統計センターがそれぞれ公表しており、誰でも無料で閲覧できます。一方で、図形情報と属性情報を組み合わせた本格的な活用を検討しているなら、より詳細なデータがそろっており、データ加工や分析の自由度が高い有償サービスを利用するのがおすすめです。

ジオテクノロジーズは、全国のデジタル地図データ(GISデータ)を整備・保有しています。加えて、高密度な人流データも自社で取得・保有し、「Geo-People(人流データ)」を通じて提供しています。

ジオテクノロジーズの地図データに、高頻度で取得した人流データを掛け合わせることで、より詳細な情報の収集・分析が可能です。さらに、その場にいた人に向けてアンケートを実施できる「Geo-Research(ジオリサーチ)」を使えば、ユーザーの意識を把握できます。

GISデータを本格的に活用していきたい事業者様や、施策・意思決定の精度を高めていきたい事業者様は、ぜひジオテクノロジーズにご相談ください




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