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2025.04.01

商圏人口とは?新規出店や販促に役立つデータの調査方法

商圏人口は、新規出店や販促活動を展開する際の重要な要素です。商圏人口を把握することで、出店を予定している場所への来客数と売上を予測し、事業の成功確率を高めることができます。

本記事では、エリアマーケティングにおいて商圏人口を把握することの意味や、商圏人口の分類と特徴、具体的な調査方法などについて解説します。

商圏人口とは商圏エリアの総人口のこと

商圏は、特定の店舗や施設において、集客や収益が期待できるエリアのことです。また、その商圏エリアに住んだり、通勤・通学などで訪れたりする人々の総人口のことを商圏人口といいます。

商圏人口をつかむと、新規出店を予定している店舗にどれくらいの来訪が見込めるか、それによってどの程度の売上が期待できるかを予測できるため、出店のための候補地選びにも役立ちます。また、潜在顧客の分析や、効率的なマーケティング手法の企画・実行にも有用です。

ただし、商圏人口が、そのまますべてターゲットになるわけではありません。商圏人口のうち、自社の店舗や施設のコンセプトとマッチする属性の人が、最終的なターゲット層となります。

そのため、精度の高いマーケティング施策を行うためには、商圏人口を分析してターゲット層を絞り込む必要があるのです。

ターゲット層を絞り込む主な要素

商圏人口の把握が重要な理由

新規出店の計画やそのプロモーションにおいて、商圏人口を把握することは重要です。その理由について、下記で詳しく確認していきましょう。

売上につながる来客数を予測できる

商圏人口を把握・分析するメリットは、来客数と売上を出店計画の段階で予測でき、データにもとづいて出店の可否を検討できることです。

商圏人口を把握せず、感覚だけで出店計画を進行すると、「通行量は多いが集客につながらない」「お店のコンセプトに合う人が少なくて売上が伸びない」といった問題に陥る可能性があります。

新規出店に際しては、商圏人口とその分析結果からターゲット層の割合を確認し、出店の可否を検討したり、効果的な販促の戦略を練ったりすることが大切です。

潜在顧客のニーズや行動パターンを把握できる

商圏人口を把握・分析すると、潜在顧客の活動時間帯やどのような属性の人が多いかがわかり、それにもとづいてニーズや行動パターンを見いだすことができます。

例えば、平日と休日、昼間と夜間で商圏内の人口構成や動きがどう変わるか、またどの年代層が多いかなどを分析することで、地域特性のより具体的な理解が可能です。昼間の商圏人口が多く、夜間に少ない場合、昼間に人が集まってくるビジネスエリアの可能性が高いため、働く人の需要が狙える戦略が効果的です。

これにより、自社のコンセプトに合う顧客の有無がわかり、出店計画が立てやすくなるでしょう。

効果的なマーケティングが展開できる

商圏人口を把握・分析して潜在顧客の属性や行動パターンを割り出すと、無駄が少ない効果的なマーケティングを展開できます。

例えば、住宅街が中心のエリアでは、家族向けの商品やサービスの導入が効果的でしょう。反対に、ビジネス街では、時間効率を重視したサービスが求められる場合があります。

このように、商圏人口の分析結果にもとづいて商品企画、価格設定、販売方法を工夫することで、効率的な集客や売上拡大が期待できるのです。

競合他社・店舗を特定できる

商圏人口を把握・分析すると、潜在顧客の属性や行動パターンにもとづき、競合店舗を特定できます。これにより、自社が出店を計画するエリアの、市場環境の把握が可能です。

さらに、競合店舗を訪れたり、提供している商品やサービス、価格帯、販売戦略を理解したりすれば、自社がどの点で差別化できるかを明確にでき、競争優位性を築けるでしょう。

商圏人口の調べ方

出店計画やプロモーションにおいて、商圏人口の把握・分析は重要な役割を果たします。それでは、商圏人口はどのように調べたら良いのでしょうか。商圏人口を調べる方法は、大きく分けて次の3つになります。

行政のデータを活用する

商圏人口を調べる際は、行政が公開している情報を活用できます。行政から取得できるデータはさまざまなものがありますが、まずは地域の市役所や区役所、図書館などで閲覧できる「行政要覧」に目を通すことが大切です。

行政要覧とは、行政機関が管轄する地域の情報をまとめた資料で、市区町村の人口順位や面積順位、世帯数、年代別の人口構成比、1市あたりの人口などが掲載されています。自治体によっては、ウェブ上でデータとして公開している場合もあるため、確認してみましょう。

ほかにも、国内在住のすべての人と世帯を対象に5年ごとに実施する「国勢調査」のデータや、それを「地理情報システム(GIS:Geographic Information System)」を用いてヒートマップ分析するなど、可視化したデータも有用です。

なお、総務省統計局では、誰でも使える地理情報システム「地図で見る統計(jSTAT MAP)」を公開しています。無料のサービスで、国勢調査など信頼性の高いデータにもとづいて、人口データや経済関連のデータを地図上に視覚的に表示することが可能です。

実地調査をする

実際に現地で調査する方法も、商圏人口を調べるときに有効です。出店を計画している場所へ、時間帯や曜日を変えて足を運び、商圏人口や周辺環境の特性を調べます。「夕方は自転車が多く駐輪スペースが必要」「日中は近くの広場にファミリーがたくさん集まる」など、数値だけではわからないリアルタイムの情報を現地で得ることが可能です。

ただし、実地調査は何度も現地に通う必要があり、費用と時間がかかることに注意が必要です。

人流データを活用する

商圏人口を調べる方法として、人流データが活用できます。人流データは、主にGPSデータなどの位置情報を収集して、それを緯度・経度で点として記録し、時系列でつないでいくことで、人の動きや滞在場所、移動経路などを把握できるデータです。

データの粒度は提供元によってさまざまですが、情報取得頻度が高いサービスやアプリを使うと、より正確に人流を把握できます。

ただし、緯度・経度と時間軸の情報だけでは、商圏分析には十分ではありません。商圏の特性を正しく把握するには、人流データが「誰のものか」までわかる必要があります。

ジオテクノロジーズの人流データには、性別や年齢、婚姻状況、最終学歴、同居家族の人数、子供の有無・年齢層、職業分類、勤務先での役職、居住形態など、10種類以上の属性情報が含まれており、商圏分析に活かすことができます。

また、位置情報の取得間隔が非常に短いため、人の移動を線として可視化できる点も特徴です。コンビニエンスストアのような滞在時間の短い店舗への来店状況なども把握できるため、商圏の実態を正確に分析することが可能になります。

商圏人口の分類と特徴

商圏人口は時間軸、属性といった要素により、多様な切り口が存在します。視点を変えて分析すると異なる特性が見えてくるため、代表的な商圏人口の分類とその特徴を確認していきましょう。

昼間・夜間の人口

最初に着目したいのが、「夜間人口」と「昼間人口」です。夜間人口は、商圏に常住している人口のこと。国勢調査では、調査年度の10月1日の午前0時に常住している人口を夜間人口として調査しています。

昼間人口は、商圏に通勤・通学で訪れる人口と夜間人口を足し、商圏から他地域へ通勤・通学のために流出する人口を差し引いた人数です。夜間に勤務する人や夜間通学の学生も昼間人口に含まれますが、買い物客や観光客は含みません。

時間帯によって人口の変動が大きい住宅地やオフィス街などでは、自社のサービスの特性を念頭に置いて、夜間人口と昼間人口の差を確認し、店舗の立地を決定することが重要です。

平日・休日の人口

学生街やビジネス街などに出店する場合、平日と休日の人口差にも注意が必要です。一般的に、学生街やビジネス街は平日に商圏に人が増え、土日や休日に人が減る傾向があります。

反対に住宅地であれば、平日は商圏から他地域に通勤・通学で人が流出して減り、土日や休日に人が増えることが予想できます。

また、イベント会場が近くにある地域は、土日や休日になると頻繁に催し物があり、平日との人口差が大きくなる傾向があるため、出店の際には把握しておくことが大切です。

属性別の人口

人口を、下記のような属性で分類する方法もあります。

<属性で分類した人口の種類>

・年代別人口:商圏人口を年代別に分類

・男女別人口:商圏人口を性別で分類

・地域別人口:商圏内の町名などで分類

 商圏人口を年代別、性別、地域別に分類することで、ターゲット層の具体的な人物像が見えてきます。これにより、潜在顧客のニーズに合わせた戦略を立てることが可能です。

商圏人口が変化する要因

商圏人口が変化する要因として、時間の経過や外部からの流入があります。それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

時間経過による人口の変化

出店をして継続的に収益を上げられるか予測するために、商圏の時間経過によってどのような人口の変化が起こるのか、その人口推移を調べることも大切です。商圏の人口の過去から現在までの変化や、未来に向けた予測によって、その将来性を判断できます。

例えば、近い将来に再開発が予定されていたり、大きな商業施設が立つ予定があったりする地域では、現在の人口動態が大きく変わる可能性があります。過去から未来にかけての人口推移を把握・予測することで、商圏の将来性やリスクを見極め、より的確な戦略を立てることができるでしょう。

なお、地図会社であるジオテクノロジーズは、地図の更新や変化点の調査を行う中で独自に取得した「◯◯地区の高速道路建設予定」など、3年先までの道路開通情報リストを持っています。

インバウンド顧客

商圏に流入してくる人口としては、インバウンド顧客も欠かせません。インバウンド顧客をターゲットに含めた店舗を検討する場合には、その人数や滞在先、動向を調査する必要があります。

例えば、国内でよく知られている観光地であっても、インバウンド顧客の興味や関心にマッチしなければ集客は見込めません。また、外部からの集客を狙うエリアでは、ターゲット層が重なる競合が多いため、スポットごとの滞在時間や動線を理解し、競争優位性を見いだすことも差別化につながります。

インバウンド顧客の属性や動向に焦点をあてた位置情報データなどを活用して、効果的に人流を把握することが重要です。

商圏人口を調べる際のポイントとは?

続いては、商圏人口を調査するにあたり、あらかじめ押さえておきたいポイントを紹介します。大切なポイントは、下記の3つです。

<商圏人口を調べる際の主なポイント>

・目的に沿って調査項目を絞る

・将来的な人口の増減を調査する

・商圏バリアを確認する

それぞれの内容について、詳しく見ていきましょう。

目的に沿って調査項目を絞る

商圏人口の調査は、目的に沿って調査項目を絞ることが大切です。商圏人口の調査では、人口や世帯数、年齢層のほか、昼間人口や夜間人口、将来人口などをはじめとした、多岐にわたるデータを調べることができます。

しかし、すべてのデータを収集する必要はありません。むしろ、過剰なデータ収集は、分析が複雑になったり、解釈に迷ったりする原因となります。調査をする際は、「何を知るために調査をするのか」を明確にし、目的に必要なデータを絞り込むようにしてください。

商圏人口の調査で得られたデータを分析し、地域の特性や潜在顧客のボリュームを把握することで、競合対策や立地戦略の最適化につながるでしょう。

将来的な人口の増減を調査する

商圏人口を調査する際は、現在の人口やその構成比率だけでなく、周辺環境などから予測される将来的な人口の増減も調べることが大切です。

例えば、駅前の再開発や幹線道路の開通予定、宅地開発計画などで現在の人の流れが変化し、商圏人口にも影響を与える可能性があります。各自治体の都市計画課に問い合わせることや、ウェブサイトを確認することで情報を収集し、長期的な視点で商圏人口の推移を考えることも重要です。現在だけでなく将来の商圏人口の予測によって、継続的な収益を見込むための戦略も立てやすくなるでしょう。

なお、地図会社であるジオテクノロジーズは、地図の更新や変化点の調査を行う中で独自に取得した「◯◯地区の高速道路建設予定」など、3年先までの道路開通情報リストを持っています。このデータは、地図検索サイト「MapFan」でも見ることが可能です。

商圏バリアを確認する

商圏バリアとは、客の来店を阻害する要素のことです。具体的には、渋滞しやすい道路や坂道、店舗の存在を覆い隠す大規模な施設などがあります。

また、立地的には申し分ない場所であっても到着しづらい要因があると、物理的だけでなく心理的な商圏バリアとなることがあります。例えば、駅前にある店舗でも、道路に横断歩道や信号がなくて遠回りが必要な場合や、幹線道路沿いで車だと反対車線から入りにくい場合、駐車場の構造が利用しづらい場合などです。

商圏バリアは地図上ではわかりにくいため、実際に足を運んで商圏バリアの有無や、その影響を緩和できる手段があるかどうかを確認することが重要です。

正確な商圏人口の把握は、出店計画の第一歩

出店を予定している場所の商圏人口の把握は、来客数や潜在顧客の予測、売上のシミュレーションなどにおいて重要な要素であり、事業計画の基盤となります。新規出店を検討する際には、商圏人口の正確な調査が不可欠です。

商圏人口の調査には、人流データの活用が効果的です。ジオテクノロジーズが提供する人流データ「Geo-People」を用いれば、一般的な商圏の決め方である「半径◯km」ではなく、実際の人の動きにもとづいた範囲を設定でき、より正確な商圏人口の調査が可能となります。

また、来店状況や商圏把握、顧客属性などを明らかにし、販促施策や運営改善を支援する「店舗カルテ」というサービスもご用意しております。

精度の高い人流データを商圏人口の調査に活用することで、効果的な出店計画の立案を目指しましょう。




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