カーナビゲーションや自動車のシミュレーション、さらには3D地図の表現など、近年のモビリティ関連技術は、より現実に近い道路環境の再現が求められています。こうした背景の中で重要な役割を果たしているのが「道路標高データ」です。
道路標高データとは、道路上の各位置における標高情報を数値として整理した地理データです。道路の高低差や勾配を把握できることから、地図表現にとどまらず、さまざまな分野で活用されています。
例えば、カーナビゲーションのルート案内では、坂道や勾配を考慮した経路計算に利用されます。また、自動車開発におけるシミュレーションや燃費・電費の分析、さらには3D地図の生成などにも活用される重要なデータです。道路の高低差を正確に表現できるため、現実に近い道路環境をデジタル空間上に再現することが可能になります。
さらに、道路標高データを活用することで、道路ネットワーク全体の勾配分布の把握など、統計的な視点からの分析にも応用できます。
本記事では、道路標高データの基本的な仕組みや活用シーンを紹介するとともに、実際にデータ整備に携わる担当者へのインタビューも交えながら、その特徴や価値をわかりやすく解説します。
ジオテクノロジーズは、日本全国の道路標高データを100%網羅しています。道路標高データの活用についてご相談がある方は、お気軽にお問い合わせください。
道路標高データとは
道路標高データとは、道路ネットワーク上の各地点に標高値(Z値)を付与した地理データです。道路リンクやノードごとに標高を持たせることで、道路が海抜何メートルの高さに位置しているかを数値として管理でき、高低差や縦断勾配を定量的に把握できるようになります。
MapFan DBの道路標高データでは、日本全国の道路ネットワークに対して標高情報が付与されています。自社でMMS車両やカーナビを装着した自動車を走らせて取得した実測データと数値標高モデル(DEM:Digital Elevation Model)を組み合わせて整備されています。これらのデータをもとに、道路中心線へのマッチングや補間処理を行うことで、ネットワーク形状に沿った連続的な標高プロファイルを生成しています。
また、標高値は1センチメートル単位で標高値を保持しており、微細な起伏や緩やかな勾配の変化も捉えられる点や、橋やトンネル、アンダーパスといった起伏の大きい構造物も、標高の変化が滑らかにつながるよう設計されている点も特徴です。これにより、単点の高さ情報にとどまらず、リンク単位での勾配(%勾配)や標高差の高精度な算出が可能となります。
こうした道路の「高さ」の情報は、さまざまな用途で活用されています。例えば、道路標高データを利用することで、道路ネットワークに沿った3D地図表示や縦断プロファイルの生成が可能となり、平面的な地図では把握しづらい坂道や高低差を直感的に可視化できます。
また、リンク単位の勾配情報を用いることで、車両の走行負荷やエネルギー消費を考慮したシミュレーションやルートの適正化にも応用されます。特に電気自動車における電費推定や、物流ルートにおける燃費計算シミュレーションなどでは、勾配情報が重要なパラメータとなります。
道路標高データを活用した3D地図表示と統計分析について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
さらに、道路ネットワーク全体の標高データを分析することで、地域ごとの高低差分布や勾配特性の把握といった統計解析も可能です。これにより、都市構造の特徴分析や交通流シミュレーション、防災・インフラ計画など、より高度なデータ活用へと展開することができます。
道路標高データの活用シーン
道路標高データは、道路の高低差や勾配を定量的に把握できるという特性から、ナビゲーション、車両開発、物流、都市計画、防災など、さまざまな分野で活用されています。
ルート検索
代表的な用途のひとつが、ルート検索です。道路の標高情報を考慮することで、坂道や高低差を踏まえた経路計算が可能となり、より実態に即したルート案内を実現できます。
また、高速道路と一般道が立体交差する区間においても、標高値(Z値)を用いることで走行している道路を正確に判別することが可能となり、ナビゲーション精度の向上に寄与します。
物流・輸送における燃費の適正化
物流分野においては、勾配情報を加味したルート適正化により、燃料消費の削減や輸送効率の向上に活用可能です。特に重量物を扱うトラック輸送では、上り勾配の影響が大きく、標高データを用いたシミュレーションにより、より燃費を抑えた配送ルートを設定することも可能になります。
自動車開発・EV評価
自動車開発の分野では、車両開発シミュレーションソフトやエネルギー消費シミュレーションに利用されています。特に電気自動車(EV)においては、勾配が電費や航続距離に大きく影響するため、道路標高データを組み込んでシミュレーションすることで、実走行に近い条件での性能評価が可能となります。
都市計画・防災
都市計画や防災分野においても重要な役割を果たします。道路の勾配や標高差を考慮した交通シミュレーションに加え、災害時の避難経路分析では、浸水リスクや土砂災害の危険区域を回避するルート設計などに活用されています。
自転車ナビゲーション
自転車向けナビゲーションにおいても、勾配情報は重要な要素です。坂道を避けたルート案内や負荷を考慮した経路提案など、高低差を踏まえたナビゲーションに活用可能です。
地図サイトMapFanで坂道の勾配が一目でわかるサカミチズβ版を公開しています。サイクリングやランニングに便利に使えますので興味のある方はぜひお試しください。MapFanサカミチズβ版に興味のある方は、こちらサイトをご覧ください。
3D地図・デジタルツイン
可視化の領域では、道路標高データを利用することで、道路ネットワークに沿った3D地図表示やデジタルツインの構築が可能となります。地形に沿った道路の高低差を再現することで、橋梁や高架を含む現実に近い都市空間をデジタル上に再現できます。
統計分析・シミュレーション
道路ネットワーク全体の標高データを分析することで、地域ごとの高低差分布や勾配特性の把握といった統計分析にも応用可能です。交通シミュレーションや都市解析、物流計画など、データドリブンな意思決定を支える基盤として活用されています。
このように、道路標高データは単なる地図表現にとどまらず、ナビゲーション、車両開発、物流、防災、都市計画、デジタルツインなど、多様な分野で活用される基盤データとなっています。
カバー率100%!ジオテクノロジーズの道路標高データ
ここまで、道路標高データの仕組みや活用シーンについて紹介してきました。
では、これらの用途に耐えうる道路標高データは、実際にどのように整備されているのでしょうか。
ジオテクノロジーズでは、日本全国の道路ネットワークを対象に、標高データを100%カバーする形で整備しています。こうした網羅性と精度の両立により、ナビゲーションやシミュレーション、分析など幅広い用途に対応するデータ基盤を提供しています。
そのデータ整備の中核を担っているのが、岩手県盛岡市にある東北開発センターです。
本章では、道路標高データの開発・整備を担当されている松本さん、渡邉さんへのインタビューを通じて、その整備手法やデータ構築のプロセスについてご紹介します。
―ジオテクノロジーズで道路標高データを保持している道路は、全体の何割くらいなんですか?
ジオテクノロジーズの道路ネットワークデータについては、全ての道路の標高データを保持しています。やはり「網羅している」ことは、大切になってきます。
―地図全体をカバーできるのはすごいですね(驚) 標高データは、どのように調査するのでしょうか?
専用車両を用いた実走調査に加えて、さまざまなデータを吟味しながら活用しています。
専用車両を使った計測は、2010年から2014年にかけて最初に行われ、以来、道路標高データの整備に使われています。
自動車専用道路の道路標高データを取得する際に使われるのが、MMS(移動式の高精度三次元計測システム)機材を積んだ調査用の特殊な車両です。
この調査用の車両を使用して、主要な道路(都市間高速道路や高規格一般道など)を調査しています。具体的には、中央道や東名高速などです。
専用の機材を備えた調査車両による計測データは、現状利用しているデータの中で、もっとも精度が高い調査手法です。
専用の車両で実走する必要があるため非常にコストがかかる調査ですが、今でも年間に100箇所程度を調査しています。調査するのは、主に新しく主要道路が開通した時など。その道路の施設周りを中心に、MMS車の実走による計測が行われます。
さまざまなデータを組み合わせて、効率的に道路標高データを整備する
―MMS車両での実走計測以外には、どんなデータが使われるのでしょうか?
ジオテクノロジーズでは、車両での計測の他にも、色々な標高データを取得して、地図全体の道路標高データを補完しています。
例えば、ジオテクノロジーズを含む協業3社(株式会社パスコ、株式会社キャドセンター)で整備するMAPCUBEのデータを使用しています。MAPCUBEとは3D都市データで、MMS車で計測した高精度の道路標高データを保持しています。
都市高速道路や一般道でMAPCUBEがカバーしている道路については、MAPCUBEデータを活用します。
さらに、走行調査データと呼ばれるデータも使用します。ジオテクノロジーズでは地図データ整備のために実走調査を行っているのですが、その際に取得したジャイロ計測データも一部使用されます。
ナビについているジャイロセンサーの角度の値より高さを求めて、それぞれの地点の高さを求めます。
当然、専用のMMS車両の計測より精度は落ちますが、MMS車両よりもコストがかからず、広範囲に対応できることが強みです。
加えて、DRM(日本デジタル道路地図協会)の保有するデータや、国土地理院の数値地図5m /10m DEMデータなども合わせて、地図全体を補完しています。
【参考】国土地理院 DEMデータ(数値標高モデル)とは?
DEMデータは、地表面を等間隔の正方形に区切り、それぞれの正方形に中心点の標高値を持たせたデータです。地上の5mは2万5千分の1地形図の図上では0.2ミリになります。
5mのDEMの場合、 2万5千分の1地形図の1cmの正方形内には2,500のDEMデータが含まれます。
参照元:国土交通省国土地理院「DEM数値標高モデル」より
―さまざまなデータを、組み合わせているのですね。その工夫で、全範囲をカバーするジオテクノロジーズの道路標高データが作られていることがわかりました。
使える素材やデータを吟味しながら、さまざまなデータを組み合わせています。それぞれのデータは精度のみならずフォーマットも異なります。それらをパッチワークのように合わせて、一つの地図にしていきます。
その過程は非常に難しいものですが、より良い道路標高データを開発・整備できるよう、日々取り組んでいます。

※六甲山の道路標高データを海側から俯瞰した図
まとめ
道路標高データは、道路の高さや勾配を把握できる地理データとして、さまざまな分野で活用されています。カーナビゲーションや3D地図表現、自動車開発のシミュレーション、燃費や電気自動車の電費、排ガスのシミュレーションなど、その用途は多岐にわたります。
こうしたデータは単に標高を付与するだけではなく、さまざまなデータを取得し、それらを組み合わせることで整備されています。道路ネットワークに正確な標高情報を付与することで、現実の道路環境に近い分析やシミュレーションが可能になります。
なお、ジオテクノロジーズが取り扱う道路ネットワークデータについて詳細に知りたい方は、こちらの資料をご確認ください。カーナビの開発を検討されている方は、是非ご覧ください。
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