山手線の駅にデジタルなキャラクター??AI新技術を使った接客の取り組みが面白い。
今JR東日本のいくつかの駅では、一風変わったお客様案内係が活躍しているのをご存知ですか?駅構内の案内は、もはや駅員さんや案内板だけの仕事ではありません。
受話器のついたデジタルサイネージ、ロボット、バーチャルキャラクターなど、少し変わった案内人(?)が、各駅でお客様の案内業務に当たっています。しかもその全てにAIが搭載されているのだとか。彼らはどんな案内をするのでしょうか。今回はAIを使った駅案内について、ご紹介します。
今JR東日本のいくつかの駅では、一風変わったお客様案内係が活躍しているのをご存知ですか?駅構内の案内は、もはや駅員さんや案内板だけの仕事ではありません。
受話器のついたデジタルサイネージ、ロボット、バーチャルキャラクターなど、少し変わった案内人(?)が、各駅でお客様の案内業務に当たっています。しかもその全てにAIが搭載されているのだとか。彼らはどんな案内をするのでしょうか。今回はAIを使った駅案内について、ご紹介します。
JR東日本が仕掛ける、“AIを育てる”プロジェクトとは
実はこれらの奇抜なお客様案内システムは、JR東日本が仕掛ける『案内AIみんなで育てようプロジェクト(フェーズ2)』の一環だ。
スマートな案内AIシステムの構築を目的として、2018年12月から2019年3月まで第一弾がおこなわれた『案内AIみんなで育てようプロジェクト』。今年2019年の8月からスタートしたフェーズ2では、対象駅や稼働台数を拡充し、さらなる効果測定に臨んでいます。
東京駅と品川駅では、株式会社ティファナ・ドットコムが提供するAIさくらさんが、お客様の案内をしています。美少女キャラクターのさくらさんが、構内地図や乗り換え情報、観光スポットやおすすめのお土産などを、8ヶ国語で案内してくれます。
上野駅では日本電気株式会社(NEC)が提供するコミュニケーション型ロボット『PaPeRo i』が活躍しています。白くて丸いロボットが可愛らしいですね。
デジタルサイネージの3D立体地図と合わせて案内してくれるので、移動ルートもわかりやすく説明してくれます。
AIさくらさん(東京駅・品川駅)[左]と案内ロボットPaPeRo i(上野駅)[右]
他にも、横浜駅の『BotFriends Vision』(凸版印刷株式会社)や上野駅の『バーチャルアテンダント』(株式会社モノゴコロ)など、11社のJR東日本グループ会社を合わせた計25社が協力し、8つの駅で30ヶ所35台のAI駅案内システムが稼働しています。
池袋駅:AIデジタルサイネージ『勝手に案内所!』(株式会社Nextremer)
このプロジェクトの一環として、池袋駅でも特殊なサイネージが稼働しています。JR池袋駅の中央改札前にある『勝手に案内所!』というAIデジタル案内所サービス。株式会社Nextremer(ネクストリーマー)が提供する、AI対話システム『minarai』を搭載したディスプレイ型AIシステムです。デジタルなキャラクターや動くロボットに比べると一見地味ですが、実は見かけ以上に優秀なのです。
ディスプレイはタッチパネルになっていて、日本語・英語・中国語・韓国語・タイ語の五カ国語に対応します。そしてディスプレイの横にある受話器を取ると、会話もできます。単語や文章で聞きたいことを尋ねると、それに対する回答音声が流れ、読み上げ内容がディスプレイに表示されます。もちろん音声も多言語対応です。
せっかくなので、受話器に向かって色々と聞いてみました。
Q:「副都心線」
A:「副都心線は中央通路西口方面にまっすぐ、地上に上がらずそのままお進みください。」
「副都心線」という一単語から、「現在地から副都心線池袋駅までの行き方」という質問意図を完璧に理解してくれました。
Q:「東京駅」
A:「目的の駅までの詳細をご覧ください」
5通りのルートが出てきました。選択肢には、JRを使わないルートもあります。
少し意地悪な気持ちになって、遠くの場所でも試してみたくなりました。
Q:「箱根湯本」
A:「目的の駅までの詳細をご覧ください」
東京駅の時と同様に5つのルートが表示されます。優秀だ。
次に、池袋周辺情報について尋ねてみます。
Q:「映画館」
A:「南口ルミネ内に『シネ・リーブル池袋』、北口方面に『池袋シネマ・ロサ』があります。」
Q:「ファストフード」
A:「JR池袋駅構内のファストフードは、北改札内にロッテリアがあります。」
駅周辺情報にも、しっかり対応していました!
さらに、単語だけでなく文章での質問にも答えてくれます。
Q:「お手洗いはどちらでしょうか?」
A:「トイレは北通路東口付近いけふくろうの像のそばあります。」
質問を聞き取り、「お手洗い」=「トイレ」ということも理解して、しっかりと必要な答えを出してくれました。
ちなみに英語でも質問してみると、
Q:「Department store(デパート)」
A:「Please press the button on the screen to select your desired location(目的の場所を選択しボタンを押してください)」という答えとともに、西武池袋本店と東武百貨店が表示されました。
JR池袋駅に設置された株式会社NextremerのAIデジタルサイネージ、『勝手に案内所!』。実際に取材してみると、思っていた以上にハイスペックでした。こちらの質問を理解し、的確な回答をくれる。しっかりと駅案内の役目を果たしてくれました。それでもまだ対応できない質問もあるようで、
Q:「ボーリング」と質問すると
A:「お答えできず申し訳ありません、お近くの駅係員にお尋ねください。」
と言われてしまいました。
※取材時の10月18日にはこの質問に答えてくれませんでしたが、現在は「ラウンドワン池袋店へは、中央通路東口方面35番の出口をご利用ください。」と案内してくれるそうです。
案内AIは、日々賢くなっているのですね。感心です。
また、このサイネージのすぐ裏側にはJRのインフォメーションセンターがあるので、AIサイネージが対応できない問題はインフォメーションセンターの人間が解決できます。逆に、インフォメーションセンターが対応しきれない人数のお客様が来ても、このAIサイネージがあれば負担が軽減されます。結果、忙しい時でもしっかりと一人一人に対応できるようになるはずです。
加えて、本来対応できていなかったインフォメーションセンターの開室時間(9:30~18:00)外も、AIサイネージが補えます。(※AIサイネージの稼働時間は初電~終電)
お互いに補いあって、効率的に目的を果たす。ここに、ひととAIの共存の未来を見ました。
今回の『案内AIみんなで育てようプロジェクト(フェーズ2)』は11月10日までの期間限定の取り組みですが、今後このようなAI案内が増えてくるのでしょうか。JR東日本は、今回の共同実験を検証し、さらなる実用化を目指していくようです。
この画期的で面白い取り組みには、実はジオテクノロジーズもデジタル地図の専門家として参加しています。駅利用者のためにカスタマイズされたジオテクノロジーズの地図や周辺スポットデータが、AIによる案内のベースになっています。AIと組み合わせることで、デジタル地図の役割もさらに大きくなっていくのかもしれません。今後のAI駅案内とデジタル地図から、目が離せませんね。
池袋駅AIデジタルサイネージ『勝手に案内所!』(株式会社Nextremer)
https://www.nextremer.com/
地図API MapFan APIについては こちら>
https://business.mapfan.com/service/api/