「物流二法改正」や「トラック新法」という言葉を耳にしたことはないでしょうか。
これらは、深刻化するドライバー不足や長時間労働といった物流業界の課題を解決し、日本経済を支える物流インフラを持続可能なものにするために整備された法改正です。2025年6月に公布され、2026年4月から施行されています。
物流二法改正では、「物流効率化法」と「貨物自動車運送事業法」の一部が改正されました。これらの取り組みは、物流業界全体のデジタル化・効率化、すなわち物流DXを推進するための重要な制度改革といえます。
なかでも注目されているのが、「貨物自動車運送事業法」の改正です。事業許可の更新制導入をはじめ、書面による運送契約の義務化、適正な運賃・料金の確保に向けた発注者側の責務強化など、これまでの業界慣行を大きく見直す内容が盛り込まれています。
本記事では、物流二法改正のうち「貨物自動車運送事業法」の改正ポイントについて、背景や目的を交えながら分かりやすく解説します。また、物流DXの推進に役立つジオテクノロジーズの地図データや人流データ、関連資料についてもあわせてご紹介します。物流二法改正の物流効率化法改正に興味のある方はこちらの記事をご覧ください。
改正貨物自動車運送事業法について
そもそも貨物自動車運送事業法とは?
貨物自動車運送事業法とは、トラックなどの貨物自動車を用いた運送事業の基本的なルールを定めた法律です。物流サービスの安全性と信頼性を確保するとともに、適正な取引環境の整備や物流の効率化を目的として制定されています。
近年では、トラックドライバーの長時間労働や人手不足が社会課題となるなか、過労運転の防止や労働環境の改善、さらには荷主企業を含めた適正な取引慣行の確立など、持続可能な物流体制の構築を支える重要な法制度として位置付けられています。
貨物自動車運送事業法の目的は?
貨物自動車運送事業法の主な目的は、トラックによる輸送の安全を守ることです。トラックは私たちの生活や産業を支える重要な存在ですが、過労運転や交通事故のリスクもあります。この法律は、ドライバーが安全に働ける環境を整え、事故を防ぐためのルールを定めています。
また、運送会社と荷主企業の適正な取引を促進することも目的の一つです。過度な値下げ競争や無理な納期設定を防ぎ、物流現場に負担が集中しない仕組みづくりを進めています。
さらに、物流を効率化し、将来にわたって安定した輸送サービスを維持することも重要な役割です。こうした取り組みにより、物流業界の持続的な発展と日本経済の安定を支えています。
今回の改正で求められているのはデジタル化・DXによる最適化
今回の貨物自動車運送事業法改正は、単独で行われたものではなく、「物流効率化法」の改正とあわせて実施されています。これら2つの法律は総称して「物流二法改正」と呼ばれ、物流業界が抱える人手不足や2024年問題への対応を目的としています。そのうち物流効率化法の改正では、物流現場の生産性向上に向けて、主に「荷待ち・荷役時間の短縮」と「積載効率の向上」の2点が求められています。
一方、貨物自動車運送事業法の改正では、適正運賃の確保や書面契約の義務化など、取引の適正化や運送事業者の健全な経営環境の整備が進められています。両法はそれぞれ異なる側面から物流改革を推進する制度として位置付けられています。
詳細は「物流効率化法改正」について記載したこちらの記事をご覧ください。
物流二法改正では、物流現場の課題を解決するために、デジタル化や物流DXによる業務の最適化が求められています。人手不足や労働時間規制への対応を進めるため、データやシステムを活用した効率的な物流体制への転換が重要となっています。
・配車・運行計画の最適化
配車業務はこれまで担当者の経験や勘に頼るケースが多くありました。そこで、AIを活用した配車システムの導入により、配送ルートやスケジュールを最適化し、走行距離の削減や積載率の向上、労務管理の適正化を実現することが期待されています。
・物流データの標準化
物流DXを進めるためには、企業やシステムの違いを超えたデータ連携が欠かせません。そのため、国は「物流情報標準ガイドライン」に基づくデータ整備やシステム構築を推進しています。データ形式を標準化することで、事業者間の情報共有がスムーズになり、物流全体の効率化につながります。
ジオテクノロジーズが持つ物流DX化に役立つ地図データ、人流データ
ジオテクノロジーズの地図データは、Google Mapsやカーナビメーカーにも活用されており、物流DXを支えるさまざまなシステムやサービスに応用できます。ここでは、物流システムの様々な機能を実現可能にするデータを紹介します。なかには、「こんなデータまで活用できるのか」と驚くようなデータも含まれています。
物流システムの企画・開発や機能拡張を検討する際の参考として、ぜひご活用ください。
なお、各データの詳細な仕様や活用方法については、それぞれの紹介ページをご覧ください。
配送ルート検索に必要な道路ネットワークデータ
道路種別や車線数、交差点、橋やトンネルといった構造物の情報に加え、通行禁止や一方通行、右左折禁止などの交通規制情報も幅広く収録した全国130万kmを網羅したGIS・カーナビゲーション向けの高精度な道路ネットワークデータです。
道路ネットワークデータの詳細情報はこちらのページをご確認ください。

大型車に適応した配送ルートを検索するために必要な大型車規制データ
全国の道路を対象に、車幅・車高・重量・積載量などの物理的制限のほか、大型車両通行禁止や危険物積載車両の進入禁止といった交通標識に基づく規制情報を収録しトラックなどの大型貨物車両などの通行可否を把握できる、全国対応の車種別規制データです。道路ネットワークと一緒に使うと大型車用の配送ルート検索を実現できます。

到着予定時間計算に必要な人流データを使った渋滞データ
ジオテクノロジーズの持つ人流データを利用した渋滞情報です。リアルタイム渋滞情報に加え、各曜日時間帯の渋滞情報を把握できる渋滞統計データです。
このデータを利用した高速道路のリアルタイム渋滞情報を地図サイトMapFanで公開しています。人流データを使った渋滞情報に興味がある方はこちらをご覧ください。
故障や事故などの緊急時にトラックの位置を分かりやすく表示できるキロポストデータ
高速道路で故障や事故などトラブルが起きた場合に正確な場所を確認するために有効です。キロポストデータの詳細はこちらをご確認ください。

その他物流DXに役立つデータ(詳細は各データの説明ページをご覧ください)
・トラックの現在位置を表示させるための(動態管理)背景地図データ
詳細はこちらをご覧ください。
・ラストワンマイル物流配送に役立つ建物ルート探索用ポイントデータ
詳細はこちらをご覧ください。

・トラックが通れるかどうかの判断に活用できる道路幅員データ
詳細はこちらをご覧ください。

・緩やかなカーブを優先するルート検索に利用可能なカーブの角度データ
詳細はこちらをご覧ください。

・重い荷物や積雪時に勾配が緩やかなルート検索に活用可能な道路勾配データ
詳細はこちらをご覧ください。

・安全な長距離輸送に役立つ、高速道路施設データ
詳細はこちらをご覧ください。
・長距離輸送で安心して休憩できるトラックステーションデータ
詳細はこちらをご覧ください。
・事故を防止に有効な事故多発点データ
詳細はこちらをご覧ください。

貨物自動車運送事業法改正内容について
2026年4月1日から貨物自動車運送事業法が改正
貨物自動車運送事業法の改正内容は、2026年4月1日から施行されています。今回の改正では、適正な運賃・料金の確保や書面による契約の推進など、物流業界の健全な発展とドライバーの労働環境改善に向けた制度が強化されました。
また、大きな変更点の一つとして、一般貨物自動車運送事業の許可に「5年ごとの更新制」が導入されました。これにより、事業者は継続的に法令遵守や安全管理体制を維持していることが求められ、業界全体の安全性や信頼性の向上が期待されています。
貨物自動車運送事業の種類
貨物自動車運送事業は、大きく「一般貨物自動車運送事業」「特定貨物自動車運送事業」「貨物軽自動車運送事業」の3種類に分けられます。それぞれ運送の対象や事業形態が異なります。
①一般貨物自動車運送事業
最も一般的な運送事業で、不特定多数の荷主から依頼を受けて貨物を運びます。宅配便や企業向け配送など幅広い物流サービスが該当します。また、軽自動車および二輪自動車以外の自動車を利用する必要があります。
②特定貨物自動車運送事業
特定の荷主のみを対象として貨物を運ぶ事業です。グループ会社間の輸送や特定企業向けの専属輸送などで利用されています。
③貨物軽自動車運送事業
軽自動車および排気量125cc超の二輪自動車を使った運送事業です。小回りが利くことから、宅配やラストワンマイル配送など地域密着型の輸送に適しています。
一般貨物自動車運送事業と特定貨物自動車運送事業は許可制
一般貨物自動車運送事業および特定貨物自動車運送事業を行うためには、国土交通大臣の許可を取得する必要があります。
許可を受けるには、車両や営業所、人員体制、安全管理体制などについて一定の基準を満たさなければなりません。また、許可取得後も法令遵守や安全運行の徹底が求められ、継続的な管理・運営が必要となります。
事業許可が5年ごとの更新制に
今回の法改正により、一般貨物自動車運送事業の許可は5年ごとの更新制となりました。これまでは、一度許可を取得すれば取り消されない限り継続して事業を行うことができました。
改正後は、5年ごとに事業者の運営状況が審査され、安全管理体制や法令遵守、ドライバーの労働環境などが適切に維持されているかが確認されます。
基準を満たしていない場合は許可を更新できない可能性もあるため、事業者には継続的なコンプライアンス対応と適切な事業運営がこれまで以上に求められます。
適正運賃の確保による労働環境の改善
今回の法改正では、トラックドライバーの労働環境や待遇の改善がこれまで以上に重視されています。従来は努力義務とされていた取り組みが強化され、事業者にはより適切な対応が求められるようになりました。
また、運送事業者が安定して事業を継続できるよう、国が示す適正原価を下回る価格での受託が難しくなります。これにより、過度な値下げ競争や不当な中間マージンの発生を防ぎ、適正な運賃の確保を目指しています。
適正な運賃が確保されることで、ドライバーの賃金向上や長時間労働の改善につながり、持続可能な物流業界の実現が期待されています。
さらに、労働環境や法令遵守の状況は事業許可の更新時にも確認されるため、事業者には継続的な改善が求められます。
ジオテクノロジーズでは各種割引にも対応した高速料金データも保有しています。高速料金データに興味がある方はこちらをご確認ください。
実運送体制管理簿の作成義務拡大
法改正により、元請事業者は1.5トン以上の貨物を運送する場合、実際に運送を行う事業者の名称や運送区間、下請けの階層などを記載した「実運送体制管理簿」を作成し、1年間保存することが義務付けられました。
また、下請事業者にも必要な情報を元請事業者へ提供する義務が課されます。これにより、複雑になりがちな委託・再委託の状況を可視化し、物流取引の透明性向上や適正な運送体制の確保を図ります。
貨物利用運送事業者への拡大
2025年4月から実運送体制管理簿の作成が義務化されましたが、2026年度以降は、これまで対象外だった貨物利用運送事業者にも作成義務が課される可能性があります。
また、多重下請け構造を改善するため、再委託は原則として2次請け以内にとどめることが努力義務として明文化されます。
これらの取り組みにより、運送委託の流れや請負階層がより見える化され、物流取引の透明性向上や適正な運送体制の確保が期待されています。
無許可業者(白トラ)への委託禁止
法改正により、無許可で運送事業を行う「白トラ」への規制が強化されます。今後は、無許可事業者に運送を依頼した荷主企業に対しても、100万円以下の罰金が科される可能性があります。
これまでは荷主側に直接的な罰則はありませんでしたが、改正後は責任が明確化されるため、委託先が適切な許可を取得しているか確認することが重要になります。
こうした規制強化により、違法な運送事業の排除を進めるとともに、安全で適正な物流環境の実現が期待されています。
再委託(二次委託)の努力義務
物流業界では、運送業務が何重にも再委託される「多重下請け構造」が長年の課題となっています。下請けの階層が増えるほど、荷主や元請事業者が実際に運送を行っている事業者や運送状況を把握しにくくなります。
今回の法改正では、元請事業者に対して、再委託を原則として二次請けまでに抑えるための取り組みを行う努力義務が新たに設けられました。これにより、運送体制の透明化や適正な取引環境の整備が期待されています。
なお、この規定は現時点では努力義務であり、直ちに罰則が科されるものではありません。しかし、対応を怠った場合には行政指導の対象となる可能性があるほか、将来的に規制が強化される可能性もあります。そのため、事業者には早期からの対応が求められています。
運送業労働者の適切な処遇の確保
物流業界では、過度な価格競争や運賃への価格転嫁の難しさから、トラックドライバーをはじめとする労働者の待遇改善が大きな課題となっています。
今回の法改正では、貨物自動車運送事業者および貨物利用運送事業者に対し、労働者の適切な処遇を確保するための取り組みが義務付けられました。
事業者は、従業員の知識や技能、経験などを適正に評価し、その評価に見合った賃金や待遇を提供することが求められます。これにより、ドライバーの賃金向上や人材確保、業界全体の労働環境改善が期待されています。
なお、具体的な基準や実施内容については、今後国土交通省の省令によって定められる予定です。
本記事では、物流二法改正のうち、2026年4月から施行された貨物自動車運送事業法の改正内容について解説しました。
今回の法改正は、ドライバー不足や長時間労働といった物流業界の課題を解決し、物流業界をより働きやすく、魅力のある産業へと変革していくことを目的としています。適正運賃の確保や取引の透明化、労働環境の改善などを通じて、持続可能な物流体制の構築が期待されています。
その実現には、デジタル化や物流DXの推進が欠かせません。ジオテクノロジーズは、地図データや人流データの提供を通じて、配車最適化や運行効率化などの物流DXを支援しています。これらの取り組みが、生産性向上と働きやすい職場環境の実現につながると考えています。
物流DX推進については、まず情報を収集することが一番大切です。最新の制度や技術動向を正しく理解し自社の物流改革に活用してみてはいかがでしょうか。
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