公開日:2026.04.30 更新日:2026.05.27

EBPMとは?意味や注目の背景、メリット、課題を解説

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EBPM(Evidence-Based Policy Making)は、統計や各種データなどのエビデンス(証拠)をもとに、政策を立案・評価する考え方です。人口減少や財政制約、地域課題の複雑化が進む中、限られた資源で最大の成果を上げる手法として注目を集めています。もともと行政分野で発展した概念ですが、民間の企業活動やマネジメントなどでも受け入れられてきました。

一方でEBPMに対し、「データがあれば解決するのか」「現場の経験が軽視されるのでは」といった疑問や懸念を持つ人も少なくありません。EBPMはあくまで判断材料のひとつであり、最終的な意思決定は人が行うという前提も重要です。

 

この記事では、EBPMの基礎知識から、注目されている背景、具体的なプロセス、メリットと課題までを体系的に解説します。

ジオテクノロジーズでは高精度な人流データ「Geo-People」と位置情報アンケートサービス「Geo-Research」などで、EBPMの取り組みを具体的に進めたい自治体・企業を支援しています。興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

EBPMの定義

EBPMの定義
EBPMは限られたリソースを、確かな根拠にもとづいて配分するための考え方です。行政や自治体の現場では、例えば来訪者アンケートなどを通じて「人の声」を拾い上げること、そして人流データによって「人の動き」を客観的に捉えたりするなど、多様なエビデンスの活用が進みつつあります。

 

従来の政策立案では、過去の慣例や経験、担当者の判断に依存する場面も少なくありませんでした。経験や知見は重要ですが、それだけで政策の効果を客観的に検証することは困難です。EBPMは、統計データや調査結果、実証分析などを活用し、「その政策は本当に効果があるのか」を定量的に示そうとするアプローチです。

なぜEBPMが注目される?

なぜEBPMが注目される?
EBPMの考え方の起源は、医療分野のEBM(Evidence-based Medicine)にあります。EBMは、医師の経験や勘だけでなく、臨床試験などの科学的根拠にもとづいて治療法を選択する考え方です。EBMの考え方が行政分野にも広がっていき、日本では内閣府が2018年頃からEBPMを推進、2023年には全予算事業への導入方針も示されました。

ただし、EBPMは「データがすべて」という考え方ではありません。エビデンスはあくまで意思決定材料のひとつであり、住民との対話や現場の知見とともに活用していくことで、より納得感の高い政策づくりを目指す枠組みです。

 

少子高齢化の進展により、地域社会の構造は大きく変化しました。医療・福祉・教育・インフラなど、さまざまな分野で需要が多様化・高度化する一方、税収の伸びは限定的。こうした状況下では、「とりあえず実施する」政策ではなく、「本当に効果がある」施策に資源を集中させる必要があります。EBPMは、その選択と集中を支える枠組みといえます。

行政の説明責任の重要性が高まっていることも、EBPMが注目される理由のひとつでしょう。政策の根拠や成果を客観的に示すことは、住民や議会への説明に不可欠です。エビデンスに基づく政策立案は、透明性と信頼性の向上にもつながります。

 

「前例踏襲」から「検証と改善」へ転換が求められていることも背景にあります。従来の行政運営では、過去の事業の継続自体が目的化するケースもありました。EBPMでは施策の効果を検証し、必要に応じて見直すことが前提です。いわば、PDCAサイクルをより厳密に回すための仕組みといえるでしょう。

 

社会環境の変化、財政制約、説明責任の強化といった要因が重なり、EBPMは政策立案の新たなスタンダードとして広がりつつあります。

EBPMの基本プロセス

EBPMは課題設定から評価・改善までを、一連の流れで設計する点が特徴です。重要なのは、エビデンスの活用を前提に政策全体を設計すること。目的が曖昧なままデータを集めても、有効な分析や意思決定にはつながりません。逆に、明確な目的と仮説があれば、必ずしも大規模なデータがなくても実践可能です。

EBPMの基本プロセスを5つのステップで解説します。

EBPMの基本プロセスを示すサイクル図

1. 目的明確化・課題設定

最初のステップは、政策の目的を具体的に言語化し、解決すべき課題を明確にすることです。投入した資源(予算や人員など)が、どのような活動につながり、どのような成果・社会的影響を期待するのか、ロジックモデルのような形で整理します。

例えば「観光客を増やしたい」という抽象的な表現ではなく、「観光客の平日の滞在時間を延ばし、商店街の売上向上につなげる」「観光地の混雑を分散させ、住民生活との調和を図る」といったレベルまで具体化することが重要です。目的が明確なら、「どのようなデータが必要か」「どの指標で成果を測るか」も見えやすくなります。

2. エビデンス収集

設定した目的や課題に沿って、必要なエビデンスを収集します。必ずしも膨大なビッグデータが必要なわけではなく、自治体が持っている統計や業務データ、アンケート調査、外部の人流データなど、目的に合ったデータを適切に組み合わせることが肝心です。

ここでポイントになるのが、「定性データ」と「定量データ」という、性質の異なる2つのデータです。

  • 定性データ(アンケート・意識調査)

イベントや観光、公共施設の利活用状況やその感想など、定性的なデータを把握したいとき、まず有効なのが来訪者アンケートです。満足度、来訪目的、滞在時間、印象に残った点、改善してほしい点などを尋ねることで、「なぜ来るのか」「何に価値を感じているのか」「どこに不満があるのか」といった主観的情報を得られます。

近年はポイ活アプリユーザーなどに対し、特定エリアへの来訪履歴にもとづいてアンケートを実施できるサービスも登場しており、実際に訪れた人だけに絞った調査が可能です。このような仕組みを活用することで、「来訪者のリアルな声」に基づいて課題や強みを把握しやすくなります。

 

  • 定量データ(人流・回遊データ)

「いつ・どこから・どこへ・どのくらい滞在しているか」といった人の定量的なデータを把握するには、人流データが有効です。スマートフォンアプリで取得されるGPSデータなどをもとに、エリアごとの来訪者数の推移、時間帯別の人出、回遊ルートなどを可視化できるサービスも登場しています。

人流データを活用すれば、「イベント実施後に周辺の回遊がどの程度増えたか」「滞在者はどの層が多いか」といった観点から、施策の影響を定量的に捉えられます。来訪者アンケートでは拾いきれない、無回答者や非回答層の行動が把握できる点も特徴です。

 

このようにEBPMにおいては、 を組み合わせることで、課題を多面的に捉えられます。「満足度は高いのにリピートが少ない」「評価は分かれるが人出は増えている」といったギャップも見えてくるため、より精度の高い仮説立案やターゲット設定が可能になるでしょう。

3. 立案・実施

エビデンス収集で得られた知見をもとに、具体的な施策案を立案します。このとき、「どの施策が、どの指標に、どの程度の変化をもたらすか」といった仮説を明示し、ロジックモデルの形で整理しておくと、後の評価が行いやすいでしょう。

観光施策であれば、「周遊キャンペーンの実施で平日昼間の滞在時間を平均30分延ばす」「イベント会場から商店街への回遊者を20%増やす」といった形で目標値を設定。その上で、結果や変化をどのように測るか、どの時点でデータを取得するかといった設計も、この段階で決めておきます。

 

施策の実施にあたっては、ターゲットとする地域・層・時間帯などを明確にし、投入する予算や人員とのバランスを意識しながら、実行可能な計画として落とし込むことが求められます。

4. 指標設定・政策評価

施策の実施後は、事前に設定した効果や成果の指標にもとづいて、効果を定量的に検証します。重要なのは、「実施前と実施後の比較」と、活動量(何回実施したか、何人参加したか)だけでなく、「成果(満足度の向上、回遊性の向上、売上や移住者数などの変化)」に目を向けること。

人流データであれば、施策前後の来訪者数や滞在時間、回遊ルートの変化を時系列で追うことができ、来訪者アンケートであれば、満足度や再訪意向の変化、認知経路の変化などを測ることができます。複数の指標を組み合わせることで、施策の効果をより立体的に評価することが可能です。

 

政策評価の結果は、住民や議会への説明にも活かせます。「この施策にはこれだけの予算を投じ、結果としてこうした変化が見られた」というストーリーを数字とともに示せることが、EBPMの価値のひとつです。

5. 見直し・改善

評価結果にもとづき、施策の継続か、改善して再実施か、縮小・終了かを検討します。うまくいかなかった施策を単に否定するのではなく、「なぜ期待通りの結果にならなかったのか」「どの条件がそろえば効果が出るか」といった学びに変える姿勢が重要です。

 

EBPMの本質は「一度で完璧な施策を打つこと」ではなく、「データにもとづいてトライ・評価・改善を繰り返すこと」にあります。来訪者の声や人流データの分析を通じて得られた知見は、次の施策に活かされ、また新たなエビデンスが蓄積されていきます。

EBPMの具体的事例

EBPMの具体的事例
EBPMは、さまざまな自治体や公共団体で実践され始めています。公式に公開されている事例をいくつか挙げます。

ウェルビーイング指標にもとづく施策展開(富山県)

富山県では、住民の主観的幸福度や生活満足度などを捉える「ウェルビーイング指標」を独自に策定し、その向上に向けた施策を展開しています。単なる経済指標だけでなく、人々の生活の質を多面的に捉え、データにもとづいて施策の方向性を検討する取り組みは、EBPMのひとつの形といえます。

出典:総務省統計局「主観的・多面的・持続的な「ウェルビーイング(well-being)」を捉える指標の策定と向上施策の展開

地域参加型交通安全対策(宇都宮市)

宇都宮市では、地域住民の参加を得ながら交通安全対策を検討し、事故データや交通量データなどにもとづいて施策の優先順位づけや効果測定を行っています。定量データと地域の声を組み合わせることで、実効性の高い対策が検討されています。

出典:総務省統計局「ヒヤリハットデータを活用した地域参加型交通安全対策事業

観光地の魅力発信と関係人口の増大(伊方町)

観光地では、来訪者の属性や行動パターン、満足度を把握し、施策に反映していく取り組みが広がっています。例えば、伊方町・佐田岬観光公社・ジオテクノロジーズによる三者連携協定では、地域の「食」の魅力を発信したり、関係人口の増大を目指したりするケースでは、アンケート調査や人流データを活用した施策立案が行われています。

出典:伊方町「伊方町の「食」の魅力発信と関係人口増大に関する三者連携協定について

 

こうした事例に共通するのは、「データを取って終わり」ではなく、「目的を定め、エビデンスを集め、施策に反映し、結果を評価する」という流れが意識されている点です。

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EBPMのメリットと課題

EBPMは、政策の質を高める有効な手法として期待されていますが、同時にいくつかの課題も指摘されています。ここでは、メリットと課題の両面から整理します。

EBPMのメリット

前例踏襲型の政策運営とEBPM型の政策運営の比較図

EBPMの最大のメリットは、政策の有効性を高められる点にあります。具体的なメリットを紹介します。

 

  • 政策の効果の定量的な検証

エビデンスに基づいた政策の設計・評価によって、限られた予算や人員を最適に活用するための判断材料が明確になります。効果の薄い事業を見直し、成果の高い事業へ資源を再配分できるでしょう。

継続的な改善サイクルが生まれる点も重要です。効果測定と見直しを前提とすることで、単年度で終わらない長期的な成果が期待できます。検証と改善を重ねることで、政策の精度は高まっていきます。

 

  • 透明性と信頼性の向上

根拠となるデータや分析結果を示すことで、行政は住民や議会に対して説明責任を果たしやすくなります。客観的に示せることで、行政への信頼強化につながります。

さらに、意思決定の質が向上する点も見逃せません。経験や勘だけでなく、客観的データを踏まえて判断することで、より合理的で再現性のある政策形成が可能になります。

 

  • 業務の効率化の進展

課題の特定から実行、評価まで、データで一貫して管理できるため、無駄な業務や重複施策の削減につながります。分析結果を共有することで、組織内の共通認識も形成しやすくなり、結果として組織の透明性向上にも寄与するでしょう。

 

さらに「来訪者アンケート」のように人の声を捉えるデータと、「人流データ」のように行動を捉えるデータを組み合わせることで、より説得力のある根拠づくりが可能です。前者はニーズや満足度といった主観的な面を、後者は実際の来訪状況や回遊パターンといった客観的な面を補完し合う関係にあります。

EBPMの課題

一方で、EBPMにはデータ・人材・制度面と大きく3つの課題が存在します。政策の質を高めるためには、EBPMの課題を認識した上で運用することが重要です。

 

  • データアクセスの制限

行政が保有するデータは、研究者や外部機関に提供されていないものも多く、統計法の対象外となるアンケートデータなどは、活用が進みにくい場合があります。その結果、エビデンス創出に制約となる可能性があるでしょう。

また、省庁間・部局間でデータ形式や管理方法が異なるため、横断的な統合・分析が難しい点も課題です。分野横断型の政策ほど、データ連携の壁が大きくなる傾向があります。

 

  • 人材やスキルの不足

政策担当者が統計分析やデータ活用の知識を十分に持っていない場合、EBPMの必要性が認識されにくく、実践に結びつけるのが難しい場合があります。また、データサイエンスや政策評価の専門人材が不足していることも、EBPM普及の障壁です。

その結果、形式的にロジックモデルを作成するだけで終わり、本質的な政策改善にまで至らないケースも見られます。EBPMを単なる「様式」にしないための組織的な取り組みが求められます。

 

  • 制度・運用面の課題

政策対象者の選定や予算配分の際、行政裁量が入りやすい曖昧な基準を用いると、エビデンスにもとづく効果測定は困難です。評価設計が不十分なまま事業を開始すると、正確な検証ができない場合もあります。

さらに、利害関係によってエビデンスが歪められるリスクも否定できません。データの解釈や提示方法によって結論が変わる可能性があるため、透明性と第三者性を確保する仕組みが重要です。

来訪者の声と人の動きから始めるEBPM

来訪者の声と人の動きから始めるEBPM

EBPMは、特別なことをするための専門的な手法ではなく、「目的から評価までの筋道を明確にし、その各段階でデータを活用する」という、政策づくりの基本を徹底するための考え方です。最初の一歩としては、すでに手元にある統計や業務データを見直したり、小規模な来訪者アンケートを実施して「声」を集めたり、人流データなどを活用して「人の動き」を捉えたりするところから始められます。

 

ジオテクノロジーズでは高精度な人流データ「Geo-People」と位置情報アンケートサービス「Geo-Research」などで、EBPMの取り組みを具体的に進めたい自治体・企業を支援しています。興味のある方はぜひジオテクノロジーズにお問い合わせください。

よくある質問

データが少ない分野ではEBPMはできないのでしょうか?

必ずしも大規模データは必要ありません。既存統計やアンケート、小規模な調査でも十分に活用可能です。重要なのは「何を検証したいのか」を明確にし、限られたデータの中で仮説を立てて検証する姿勢です。

EBPMを導入すると、現場の裁量や経験が軽視されませんか?

EBPMは経験や現場知を否定するものではありません。データは意思決定の材料の一つであり、最終判断は人が行います。むしろ、現場の仮説や気付きをデータで裏付けることで、説得力を高めることができます。

民間企業でもEBPMの考え方は役に立ちますか?

はい。マーケティング施策や新規事業開発、人材施策などにおいても、仮説設定→データ分析→効果検証→改善というサイクルは有効です。行政に限らず、合理的な意思決定を行うあらゆる組織で活用できます。

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