公開日:2026.04.30 更新日:2026.04.30

交通空白解消に向けて国土交通省が推進するMaasプロジェクトコモンズ(COMmmmONS)とは?

X Facebook LinkedIn

JRの運賃値上げが話題となっています。背景には、赤字路線の維持に加え、資材費や人件費の上昇といった構造的な課題があります。なかでも、人口減少に伴う赤字路線の存続は、今後ますます避けて通れないテーマとなっています。
こうした状況は、地域に暮らす人々の移動手段だけでなく、観光で訪れる人の移動環境にも影響を及ぼします。観光客の受け入れは地域活性化の鍵として注目されており、移動手段の確保はその前提条件ともいえます。
今回は、人口減少がもたらす地域の移動課題に対し、国が推進するMaaSの取り組み「コモンズ(COMmmmONS)」について紹介します。

人口減少対策として観光に力を入れている地域が多くあります。観光地を訪れた人が実際にどのような行動をとっているのかを知ることは観光施策の立案のための重要なデータになります。
その地域に詳しい方であればおおよそこのあたりを回遊しているだろうと予測できますが、実際の移動データで確認することが大切です。特に施策を実施する前と実施した後でどのような変化が起こったかの検証は次の施策を練る上で重要です。このような検証に使うデータを個々の自治体や企業で収集することは難しいものです。ジオテクノロジーズの人流データを使えば、現状の人の流れの確認や施策実施後の変化などを分析することで観光施策に役立てることができます。地域の観光促進に人流データを活用したい方はこちらの資料をご覧ください。

交通空白解消に向けて国土交通省が推進するMaasプロジェクトコモンズ(COMmmmONS)とは?

都市が抱える移動交通の課題と地域ニーズ

<地域交通が置かれている現状>

1.利用者減少の長期化
日本の総人口は2008年をピークに減少局面に入り、今後も縮小が続く見通しです。これに伴い、地域公共交通の利用者も中長期的に減少傾向にあります。加えて、新型コロナウイルス感染拡大による外出抑制の影響で地域公共交通の利用は一時的に大きく落ち込み、その後も十分な回復には至っていません。路線バス、タクシー、地方鉄道など幅広い交通機関で需要減少が続き、とりわけ地方で顕著です。結果として運賃収入が低下し、事業継続や路線維持の負担が増大しています。

2.深刻化するドライバー不足
利用者減少に加え、運転手不足が構造的課題として顕在化しています。輸送分野全体で将来的な人手不足が見込まれており、求人倍率も高止まりが続いています。加えて、従事者の高齢化が進み、若年層の確保も難航しています。このため、人員不足を背景に減便や路線廃止を余儀なくされるケースが増えています。

3.交通ネットワークの縮小とサービス低下
需要減少と人手不足は、サービス水準の低下という形で顕在化しています。特に地方では、バス路線の減便・廃止が進行し、日常の移動手段が失われつつある状況です。交通網の縮小により、医療機関、教育機関、商業施設へのアクセスが制約され、地域の生活基盤そのものに影響が及んでいます。

<交通空白の解消のために地域輸送資源をフル活用する必要性>

個々の事業者間で従来分断されている輸送サービスを統合し、効率的に再配置し、地域輸送資源をフル活用できれば、地域全体の移動課題解決が可能となります。
従来は、路線バスやコミュニティバスが市街地や鉄道駅への移動を担い、スクールバスは学校への通学、病院送迎車は医療機関への移動といったように、用途ごとに個別最適で運用されていました。それぞれの車両や運転手は特定の目的に限定されており、空き時間や余剰リソースが発生していても、他用途に活用されにくい構造となっていました。

これに対し改善後の姿として、まず「需給の統合調整」が挙げられます。スクールバスや病院送迎車、路線バスといった各分野の車両・運転手の稼働状況を一元的に管理し、空き時間を他の移動需要に活用できるようにします。これにより、例えば通学時間帯以外のスクールバスを地域の移動手段として活用したり、病院送迎車を他の目的にも利用したりするなど、地方のあらゆる輸送資源の有効活用が実現できます。こうした運用はシステムによって効率的に管理され、車両は公共ライドシェアとして柔軟に機能します。
さらに「需給の集約」により、交通モード自体の再編も行われます。複数の移動サービスを路線バスに一本化することで、通勤・通学・通院など異なる目的の利用者が同じ交通手段を共同利用(混乗)する形へと転換できれば、輸送の効率性が向上するとともに、運行頻度や利便性の維持・向上にもつながります。
このように、地域内に点在する輸送資源を横断的に統合・最適化することで、限られたリソースでも持続可能な交通サービスを実現可能となります。

PDF:地域公共交通政策の現状と今後の展開_国土交通省

 

公共交通の他、地方の移動手段を確保するための方法として、オンデマンド交通という新しい形態の交通手段もあります。

オンデマンド交通とは、利用者の予約に応じて運行ルートや時間を柔軟に変更できる交通サービスです。

オンデマンド交通は、コミュニティバスや路線バスよりも輸送コストを低く抑えられる交通手段として、政府が推進しています。

地域交通におけるデジタル活用の成果と課題

公共交通の利便性向上に向けた取り組みは、世界的に「MaaS(Mobility as a Service)」が注目を集めたことを背景にスタートしました。2019年には国土交通省内にモビリティサービス推進課が設置され、推進体制が整備されるとともに、「日本版MaaS推進・支援事業」が立ち上がり、国による具体的な財政支援が開始されました。
これらの取り組みにより、モビリティサービスは着実に普及し、全国で100以上のMaaSサービスが展開されるまでに拡大しました。デジタル技術を活用した新たな移動サービスは各地で一定程度まで定着し、公共交通の利便性向上に寄与する成果が見られています。

一方で、普及の進展に伴い、新たな課題も顕在化しています。複数のアプリやサービスが個別に展開された結果、データや機能が連携されない「サイロ化」が進み、利用者にとっての利便性向上に限界が生じています。また、「交通空白」と呼ばれる公共交通の未整備地域の問題も依然として残っており、地域交通そのものの持続可能性に対する懸念が強まっています。
これらの成果と課題を踏まえ、2025年からは単なるサービスの提供にとどまらない、データの活用や産業構造の強靭化を目指す「地域交通DX」の推進へとフェーズが移っています。

MaaS(マース:Mobility as a Service)という言葉をご存じの方も多いと思いますが、ここで簡単にご紹介します。MaaSとは、複数の移動手段を統合し、1つのサービスとして提供する考え方です。スマートフォンなどでルート検索・予約・決済までを一括で行える点が特徴で、公共交通に加えタクシーやシェアモビリティも含めてシームレスな移動を実現します。MaaSとは何か詳しく知りたい方はこちらからご確認ください。

2025年以降解決すべき課題

これまで、MaaSアプリや配車アプリなどデジタル技術を活用したモビリティサービスは一定程度まで普及してきました。一方で、事業者や地域ごとにシステムや業務が個別最適で構築されてきた結果、サービスやデータの連携が進まず、いわゆるサイロ化が生じ、サービス品質の向上や業務効率化、さらにはデータに基づく政策立案の妨げとなっていました。

こうした課題を踏まえ、サイロ化の打破と連携・協働を軸に地域交通のDXを推進するプロジェクト「コモンズ(COMmmmONS)」が始動しています。このプロジェクトでは、サービス、データ、マネジメント(政策)、ビジネスプロセスの4領域を横断し、相互運用性の確保に向け、ベストプラクティスの創出と標準化を一体的に推進しています。さらに、標準仕様や技術仕様を社会全体の共通財産として展開することで、持続可能で利便性の高い地域交通の実現を目指しています。

コモンズ(COMmmmONS)が打破を目指すサイロとは?

地域交通は、大手鉄道事業者と多数の中小の二次交通事業者が同一エリア内で個別にサービスや業務を展開する構造となっています。このような構造のため、サービスやデータが事業者ごとに分断される「サイロ化(=各主体が孤立し、情報や仕組みが連携していない状態)」が生じており、連携・協働による持続可能な交通の実現に向けた課題となっています。コモンズ(COMmmmONS)が打破を目指す4つのサイロとその課題について見ていきましょう。

① サービスのサイロ

地域内では多様な交通モードや事業者のサービスが個別に展開され、MaaSも事業者単位での提供にとどまっています。その結果、移動手段の選択肢は増えた一方で、利用体験は分断され、利便性が低下しています。

② データのサイロ

交通事業者ごとにデータが独立して管理されており、標準化も進んでいないため、地域全体でのデータ活用が困難です。さらに、紙ベースの運用も多く、移動需要を網羅的に把握できていない状況です。

③ マネジメントのサイロ

地域交通の再設計に必要な政策手法や評価指標などの知見が体系化・共有されておらず、自治体ごとに対応が分断されています。結果として、取り組みは個別最適にとどまり、汎用的なノウハウとして蓄積されていません。

④ ビジネスプロセスのサイロ

中小事業者が中心の産業構造により、業務やシステムが個別に最適化され、連携・協働が進みにくい状況です。加えて、投資余力の制約や参入障壁の高さから、業務高度化やサービス革新が進展しにくくなっています。

 

特にデータのサイロについては、各事業者が単体で持っているケースが多く、複数の事業者にまたがる移動の情報や
バス、電車、車など複数の移動手段を連続的に収集したデータを入手することは難しい状況です。
ジオテクノロジーズでは事業者に依存しない人流データを保有しています。また、この人流データは、鉄道、バス、自動車、徒歩・自転車の4つの移動手段にわけて分析することが可能です。人流データの詳細に興味がある方はこちらからお問い合わせください。

コモンズ(COMmmmONS)は、地域交通におけるサイロ化を打破し、地域全体でのMaaS実現を目指すプロジェクトです。「サービス」「データ」「マネジメント」「ビジネスプロセス」の4つの観点からデジタル活用を一体的に推進し、分断された仕組みや情報の連携を図ります。これにより、地域交通の持続可能性・利便性・生産性を高めるとともに、「交通空白」の解消など、地域交通のリデザインを全面的に進めています。

国土交通省が推進する交通空白解消等に向けた地方交通のリデザイン4分野

コモンズ(COMmmmONS)を通じて何を実施するのか、地方交通のリデザイン4分野について見ていきましょう。

① 交通空白の集中的解消(地方交通の共同化)

複数の自治体や交通事業者が連携し、運転者や車両などの輸送資源を共同で活用することで、地域交通の持続可能性を高めます。調査・合意形成から車両導入、システム整備、運行費までを一体的に支援し、共同運行モデルの構築を後押しします。あわせて、官民連携プラットフォームの実証や、自治体を中心とした連携体制の強化、人材育成を推進します。さらに、モビリティデータの活用やデジタル技術の導入により、効率的な運行と他分野連携を実現します。計画策定・更新や事業計画の支援、財政投融資も組み合わせ、デマンド交通や公共ライドシェアの導入を含め、交通空白の早期解消を図ります。

② インバウンド観光における移動手段の確保

訪日外国人旅行者の増加を見据え、観光地における二次交通の充実を図ります。公共交通や日本版ライドシェアの活用により移動手段を多様化し、乗り場や待合環境の整備によってアクセス性を向上させます。加えて、多言語対応やキャッシュレス決済の普及、観光向け車両の導入などにより受け入れ環境を整備し、周遊しやすい交通基盤を構築します。

③ 自動運転の推進(地域交通の高度化・生産性向上)

自動運転の事業化に向けた重点支援を行い、地域交通の省人化と効率化を進めます。あわせて、地域交通DXの推進によりシステム標準化やキャッシュレス化を進め、運行管理や利用体験の高度化を実現します。EV車両や自動運転車両など先進技術の導入を支援するとともに、ローカル鉄道やバスネットワークの再構築に向けた調査・実証や施設整備を進め、持続可能な交通体系への転換を図ります。

④ 地方公共交通の維持・確保

住民生活を支える基盤として、地域公共交通の維持・確保を図ります。離島航路や航空路、幹線・地域内フィーダー路線の運行費を支援し、移動手段の継続性を担保します。また、バリアフリー車両の導入や施設整備を進め、誰もが利用しやすい環境を整備します。加えて、地域鉄道の安全対策や、危険性のあるバス停の移設などを通じて、安全性の向上にも対応します。

インバウンド観光客の移動手段の確保と、地域住民の移動利便性の両立は容易ではありません。例えば古都京都では、大型のスーツケースを持った観光客が路線バスを利用することで混雑が生じ、住民の日常的な移動に影響が出ているケースが見られます。ジオテクノロジーズでは人流データを使って京都観光に訪れる日本人と外国人の行動差異についての分析レポートを公開しています。京都観光における日本人・外国人の行動分析レポートに興味がある方はこちらの記事をご覧ください。

コモンズ(COMmmmONS)プロジェクト事例

実際のコモンズ(COMmmmONS)プロジェクト事例を紹介します。

MaaSアプリの標準化推進プロジェクト:サービス品質の向上

他分野連携や移動需要の惹起など、地域交通の課題を解決するモビリティサービスの品質向上を実施し、鉄道・バス・デマンドバスなどのチケット認証や販売システムの技術仕様を標準化し、1つのアプリで様々なサービスに接続可能にすることで、サービスの利便性向上を実現しています。

モビリティ・データの標準化プロジェクト:データ取得環境の構築

バラバラに存在する地域交通に関するデータを標準的・総合的・横断的に取得可能とする環境を整備し、利用実績データや運行情報データの仕様を標準化し、地域におけるデータ活用のコスト低減と利便性向上を実現しています。

データ分析ソリューションの高度化プロジェクト:データに基づく地域交通政策

データ分析技術の開発や路線再編を円滑化する仕組みづくりを実施し、地域交通再編によるサービスレベルや収支率の変化を予測するシミュレーション技術を開発することで、地域交通の最適化と持続可能性向上を実現しています。

バス業務の標準化プロジェクト:事業生産性の向上

業務モデルの標準化やシステムインターフェースの共通化などを実施し、業界連携によってバス事業の業務プロセスを標準化してデータ活用と業務効率の向上を図ることで、事業全体の生産性向上を実現しています。
参考:地域交通DX推進プロジェクトCOMmmmONS ❘ プロジェクト紹介 P7

 

コモンズでデータのサイロを打破することで、定量的なデータ分析が可能になると考えられます。
事業生産性の向上については、定量的なデータだけでは見えてこない利用者の定性的な情報も必要になります。
特定の地域交通を使った人へのアンケートなどは乗っている人に直接ヒアリングするか、本調査の前に対象の地域交通を利用したかどうかのスクリーニング調査を実施すれば可能ですが、手間やコスト、時間が非常にかかります。
ジオテクノロジーズのジオリサーチを活用すれば、特定の交通手段を使った人を抽出し、アンケートを実施することが可能です。
アンケートによる交通利用者の定性的な声の収集に興味のある方はこちらからお問い合わせください。

まとめ

地方の課題である交通空白地帯をなくすために政府はMaaS、自動運転などを実現させる取り組みを行っています。
地方によって特有の課題があり、全国一律でこの施策を実施すれば全て解決するという施策は難しく、各地域に適した公共ライドシェア、オンデマンド交通、公共交通などの手段を採用し、人々が不自由なく移動できる体制を実現していく必要があると考えます。
交通空白地帯をなくすための取り組みには、コモンズが重視する定量的なデータとともに地域の声を収集してサービスに反映させ、より多くの人に利用してもらう必要があります。なぜなら、利用者が多くないとビジネスとして成り立たないからです。
ビジネスとして成り立たなければ補助などで一時的に維持することは可能でも、持続的な運用は困難です。

法人向けサービスに関するお問
い合わせはこちらから

関連記事

資料請求やサービス
に関する説明のご依頼は、
下記フォームよりお気軽にご連絡ください