自動運転と聞くと、何も操作しなくてもクルマが目的地まで連れて行ってくれる未来を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
しかし現在、日本で販売されている乗用車に搭載されている自動運転技術の中心はレベル2と呼ばれる運転支援機能です。その背景には、自動運転車が事故を起こした際の責任の所在など、法制度や社会的なルールがまだ十分に整理されていないという課題もあります。
では、本格的な自動運転の普及はまだ先の話なのでしょうか。
政府は、より高度な自動運転の実現によって社会課題の解決を目指す方針を掲げており、現在はレベル4の実装・普及に向けた検討や取り組みが進められています。
今回は、政府が推進する自動運転レベル4に向けた具体的な取り組み内容と、その実現によって解決が期待される課題を整理するとともに、自動運転に活用可能なジオテクノロジーズの地図データや各種サービスについてもご紹介します。
ジオテクノロジーズでは自動運転(AD・ADAS)に活用可能なMapFan ADASという地図データを整備しています。MapFan ADASに興味のある方はぜひお問い合わせください。
喫緊で解決していかなければいけない社会課題
<物流業界ドライバー不足の解消>
これまでトラックドライバーは、長時間労働が当たり前という厳しい環境で働いてきました。特に近年は、ネット通販の急拡大によって宅配荷物が増え、労働時間はさらに長くなる傾向にあります。
こうした状況を改善し、ドライバーの健康を守るために、2024年4月1日から働き方改革関連法が物流業界にも適用されました。これによりトラックドライバーの年間の時間外労働時間に上限が設けられるようになりました。
しかし、この法改正は新たな課題も生んでいます。残業時間が制限されたことで、1人のドライバーが1日に運べる荷物の量が減少し、物流会社の売上や利益に影響が出始めています。さらに、人手不足や配送遅延といった問題も顕在化しています。
加えて、2023年4月1日からは中小企業を対象に、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が25%から50%へ引き上げられました。物流業界も対象となっており、多くの中小物流企業では人件費が大幅に増加し、経営を圧迫する要因となっています。
このように、中小企業が約99%を占める物流業界は、「物流2024年問題」によって、輸送能力の低下とコスト増加という二重の負担を抱え、業界全体が大きな転換点を迎えています。
地図データで実現する効率的な配送に興味がある方はこちらの資料をご確認ください。

出典:(公社)全日本トラック協会「労働関係法令が改正されました」
<地域交通が置かれている現状>
1.利用者の減少が続く地域公共交通
2.ドライバー不足という構造的課題
3.公共交通網の縮小とサービスの低下
<地域から求められていること>
1.高齢者の移動手段の確保
2.医療・教育へのアクセス維持
自動運転レベル4とは?
自動運転は、搭載されている技術や運転主体の違いによってレベル0からレベル5までの6段階に分類されています。レベルが上がるほど、自動化の範囲とシステムの責任範囲が広がります。
レベル2とレベル3の大きな違い
レベル2までは運転支援の段階です。
アクセル・ブレーキ・ハンドル操作をシステムが同時に制御できる場合でも、最終的な運転責任はドライバーにあります。ドライバーは常に周囲を監視し、いつでも操作を引き継げる状態でいる必要があります。一方、レベル3になると状況が大きく変わります。一定の条件下では、システムが運転の主体となり、自動車を操作します。作動中の運転責任は基本的にシステム側に移り、ドライバーは即座に操作しなくてもよい状態になります。
つまり、
レベル2までは「人が運転し、システムが支援する」段階
レベル3以上は「システムが運転を担う」段階
という大きな違いがあります。
レベル4とはどのような段階か
レベル4は、特定の走行エリアや条件に限定されるものの、システムがすべての運転操作を担う自動運転のレベルです。
走行できる地域はあらかじめ設定されたエリア(特定の市街地や専用ルートなど)に限られますが、その範囲内であれば、ドライバーが操作しなくても、車両が目的地まで自動で走行します。緊急時の対応も含めてシステムが担う点が特徴です。いわば、エリア限定で目的地まで自動で運んでくれる段階がレベル4といえます。
現在の乗用車の状況
現在、日本で販売されている一般的な乗用車の多くは、レベル2の運転支援機能が中心です。高速道路での車線維持支援や追従走行機能などはありますが、あくまでドライバーが主体の運転支援にとどまっています。
レベル4については、一部地域での実証実験や限定的なサービスは進められているものの、一般の乗用車として広く普及している段階には至っていません。そのため、私たちが日常的に利用している乗用車は、現時点ではまだ本格的な自動運転のレベルであるレベル4には到達していないのが現状です。
自動運転レベル4実現の意義
ドライバーが運転操作を意識せずに済むブレインオフの状態を実現する自動運転レベル4。
その普及は、個人だけでなく社会全体に大きなメリットをもたらすと期待されています。
1.地域公共交通の維持
まず期待されるのが、地域公共交通の維持です。
過疎化が進む地域では、バス利用者の減少やドライバーの高齢化により、減便や路線廃止が進んでいます。その結果、高齢者を中心に移動手段の確保が大きな課題となっています。
レベル4の自動運転バスが普及すれば、特定エリア内で無人運行が可能になります。これにより、ドライバー不足や人件費の問題が緩和され、路線や便数の維持が現実的になります。安定した運行が実現すれば利用者の増加も期待でき、地域の生活基盤を支える交通インフラとして再構築することが可能になります。さらに、自動運転の導入は地域の先進性を示す取り組みとして、住民の誇りや愛着の向上にもつながります。
地域公共交通の維持を自動運転で実現できれば、政府が提唱しているスマートシティ構想の実現にもつながります。自動運転とスマートシティ構想の関係性について詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください。
2.ドライバー不足の解消
物流や公共交通の現場では、深刻なドライバー不足が続いています。高齢化や長時間労働、いわゆる2024年問題による労働時間規制の影響もあり、人材確保は年々難しくなっています。
レベル4の自動運転トラックやバスが実用化されれば、高速道路や特定エリアなど条件を満たした範囲で無人運行が可能になります。これにより、ドライバーの負担軽減だけでなく、人件費の抑制や収益改善にもつながります。すぐにすべてが無人化するわけではありませんが、慢性的な人手不足を補完する有効な手段として期待されています。
3.交通事故の削減
レベル4の普及で特に大きな効果が期待されているのが、交通事故の削減です。
交通事故の多くは、わき見運転や漫然運転など、人為的なミスが原因とされています。自動運転レベル4では、限定された領域内でシステムがすべての運転操作を担います。そのため、ドライバーの判断ミスや不注意による事故を大幅に減らすことが可能です。人に起因する事故を抑制できれば、死亡事故や重傷事故の減少にもつながると考えられています。
4.渋滞の緩和
次に挙げられるのが、渋滞の緩和です。
渋滞は事故や工事だけでなく、不適切な車間距離や無意識の減速によって発生する自然渋滞が大きな要因となっています。特に上り坂やトンネル付近では、ドライバーが無意識に速度を落とし、後続車が連鎖的にブレーキを踏むことで渋滞が発生します。レベル4の車両であれば、一定の速度と適切な車間距離を保ちながら安定走行が可能です。車両同士が協調して走行することで、交通の流れが滑らかになり、渋滞の緩和や抑制が期待できます。
5.移動時間の有効活用
レベル4のもう一つの大きなメリットが、移動時間の有効活用です。
通常、ドライバーは運転に集中する必要がありますが、レベル4では特定条件下で運転から解放されます。その時間を、仕事・読書・休息などに充てることが可能になります。
過去の試算では、渋滞などによりドライバー1人あたり年間約40時間が無駄になっているとされています。自動運転が普及すれば、この時間を生産的に活用できるようになり、社会全体としても大きな経済効果が見込まれます。
政府はレベル4を目指した「自動運転の実現に向けた取り組みについて」という資料を公表しています。
自動運転と地図の関係性
自動運転と地図の関係については、かつて「自動運転に地図は必須ではない」とする考え方もありました。しかし現在では、その認識は大きく変わりつつあります。
たとえば、建物や大型車両などの遮蔽物によって、LiDARやカメラでは信号機や標識を直接認識できない場合があります。また、少し先にある複雑な分岐や合流ポイントなども、センサーだけで瞬時に正確に把握することは容易ではありません。こうした“見えない情報”や“これから起こる道路状況”を事前に把握するための基盤として、高精度な地図データが不可欠と考えられるようになっています。
さらに、LiDARやカメラが取得するデータは膨大であり、それらを毎回ゼロから解析・判断するには大きな計算負荷がかかります。そこで近年の自動運転システムでは、あらかじめ整備された地図情報を参照しながら認識・判断を行うことで、処理を効率化し、計算負荷を抑える手法が主流となっています。
政府の自動運転レベル4への取り組みと具体的なレベル4を目指した事例
政府が考える自動運転レベル4への道筋
公共交通などの商用車と自家用車では、それぞれ異なる道筋で自動運転の実現を目指しています。
完全自動運転(レベル5)の実現には多くの課題があるため、まずは走行エリアや条件を限定しやすい商用車から、無人自動運転の実証や実装が先行して進められています。
一方、自家用車では、複数の自動車メーカーが広範囲で利用できる高度な運転支援技術の開発を進めています。今後は、商用車での先行導入によって蓄積された技術や知見が、自家用車の量産開発へと活かされていくことが期待されています。

政府の自動運転実現に向けた取り組みに従って民間各社も自動運転レベル4を実現するための取り組みを行っています。
ここでは喫緊の課題を解消するための取り組み事例を紹介します。
①自動運転レベル4に向けた取り組み (「RoAD to the L4」の実証実験)
現在、日本各地で自動運転レベル4の実装・実証が進められています。地域特性に応じた形で、無人運行サービスや専用レーンの活用など、さまざまな取り組みが展開されています。
■ 新東名高速道路
東京〜名古屋間を結ぶ新東名高速道路では、高速道路における自動運転の実証が進められています。
・既存の東名高速道路に並行して6車線区間を整備
・駿河湾沼津SA〜浜松SA間に自動運転車優先レーンを新設
・トラックの自動運転実証実験を実施
物流分野におけるレベル4実装を見据えた取り組みとして注目されています。
■ ひたちBRT(茨城県日立市)
日立市では、鉄道跡地を活用したバス専用道路(BRT)での取り組みが進んでいます。
・鉄道跡地をバス専用道路空間として整備(一般車両や自転車が混在しない)
・2025年2月3日より、乗務員同乗型レベル4自動運転サービスの長期営業運行を開始
・将来的な遠隔監視型レベル4への移行を見据えた取り組みを実施中
専用空間を活用することで、安全性と実装スピードを両立しています。
■ 柏の葉(千葉県柏市)
柏市柏の葉エリアでは、都市部でのレベル4移動サービス実装に向けた取り組みが進行中です。
・2025年度内のレベル4自動運転移動サービス実装を目指す
・他地域展開を見据えた協調型システムの開発
・評価環境の汎用化や、路側機・データ連携プラットフォームの共通仕様化を推進
都市型スマートシティのモデルケースとして、自動運転とインフラ連携を進めています。
■ 福井県永平寺町
永平寺町では、鉄道廃線跡地を活用した自動運転サービスが実施されています。
・廃線跡の自転車・歩行者専用道路を自動運転車両の走行空間として活用
・山間部の走行環境に対応するため、電磁誘導線を用いた小型電動カートを導入
・国内初となる、道路運送車両法に基づくレベル4認可(2023年3月取得)
・道路交通法に基づく特定自動運行の許可(2023年5月取得)
現在は、無人による自動運転移動サービスとして実際に運行されています。
<参考>UD TRUCKSホームページ
②自動運転バスの取り組み(平塚市の自動運転バス実証実験)
神奈川県平塚市では、地域公共交通の維持・ドライバー不足の解消を目的として、自動運転バスを用いた実証実験を進めています。平塚駅南口エリアの既存バス路線(平15系統:約4.3km)を走行ルートとして、自治体・交通事業者・技術企業が連携しながら実装に取り組んでいます。実証実験は、運転士が同乗しつつバスの走行操作をシステムに委ねる自動運転レベル2の段階で行われ、将来的にはレベル4での運行実現を視野に入れています。
使用される車両には、いすゞ自動車が提供する大型路線バス「エルガEV 自動運転バス」などが含まれ、実験を通じて取得したデータは地域公共交通の将来的な自動運転化に役立てられる予定です。
また、自動車メーカーの日野自動車は、今後のモビリティサービスの進化に向けて、自動運転バスに関わる包括的なサービス提供を計画していると複数のメディアが報じています。これは単に車両を製造・販売するだけでなく、運行管理やサービス全体を一括で提供する“モビリティ・サービス事業”として進められる方向です。
日野自動車は商用車分野では長年バスやトラックの製造実績を持ち、今後の技術統合や新たな運行モデルの構築を通じて、自動運転を含む次世代交通サービス全体の実用化・普及を目指す動きを強めています。
今回は政府が実現を目指している自動運転レベル4について、解決すべき喫緊の課題やレベル4の概要、地図と自動運転の関係性、さらには民間企業による具体的な取り組みをご紹介してきました。
自動運転の実用化は、単なる技術革新にとどまらず、地域交通や物流といった私たちの生活を支えるインフラを将来にわたって維持するための重要な取り組みです。その意義について、ご理解を深めていただけましたら幸いです。
ジオテクノロジーズは、デジタル地図技術を通じて、自動運転の実用化と社会実装の推進に貢献してまいります。
ジオテクノロジーズでは高速道路であれば自動運転に活用できる高精度地図を保有しています。高精度地図に興味のある方はこちらからお問い合わせください。
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