公開日:2026.02.19 更新日:2026.02.24

自動運転(AD)はスマートシティに何をもたらすのか?

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先日、会社の近くのバス停で「運転手不足による減便」の案内を目にしました。

「まさか東京でも……」と、地域交通の維持が困難になっている現状を肌で感じた瞬間でした。現在、日本各地の地域社会が抱える「移動の課題」は、もはや他人事ではありません。

そこで今回は、政府が推進するスマートシティ構想と、その鍵を握る自動運転がもたらす効果について詳しく解説します。あわせて、ジオテクノロジーズが提供する自動運転支援データや、課題解決に向けた具体的な取り組みについてもご紹介します。

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自動運転(AD)はスマートシティに何をもたらすのか?

現在の地域が持つ移動の課題

日本の地域公共交通は、少子高齢化や人口減少による構造的な変化とともに、深刻な課題を抱えています。人口減少や利用者減少が進む一方で、地域住民からは公共交通の維持や充実を求める声が強まっており、交通サービスの役割が改めて問われています。

こちらの記事の地域公共交通の現状、地域の要望の数値は国土交通省が発表している資料を参考にしています。

参考資料:国土交通省 地域交通の現状 https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001898150.pdf

<地域公共交通の現状>

1. 地域公共交通利用者の長期的な減少

日本全体では総人口が2008年をピークに減少に転じ、2030年には約1億2,011万人、2040年には約1億1,284万人にまで縮小するとの推計があります。この人口減少に伴い、公共交通の利用者数も長期的に減少傾向を示しています。

また、新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛の影響で地域公共交通の利用者数は急激に減少し、その後も以前の水準には戻っていません。利用者減少は路線バス・タクシー・鉄道といった多くの交通サービスで共通しており、特に地方部の利用落ち込みが顕著です。

2.運転従事者不足という深刻な構造問題

地域公共交通を支える人材確保も大きな課題です。労働需給シミュレーションによれば、2030年には輸送・機械運転・運搬業(=バス・タクシー運転手など)で約37.9万人、2040年には約99.8万人もの人手不足が予想されています。これは全産業に比べて非常に高い不足率であり、運転手の担い手確保が困難になることを示しています。

さらに、これらの職種における求人倍率は他産業より高く、運転手不足が継続していることが統計として示されています。求人倍率の高さは求人に対して求職者が少ないことを意味し、地域公共交通事業者が人材確保に苦戦していることを裏付けています。

3.バス路線縮小・サービス低下の現実

利用者減少と人手不足は、地域公共交通のサービス低下につながっています。特に地方部では、バス路線の減便・廃止が進み、日常生活の足である交通手段が失われつつあります。住民の生活圏から交通サービスが消えることで、病院や学校、買い物への移動が困難になるケースが増えています。

<地域の要望>

こうした背景を受け、地域からは以下のような具体的な要望が寄せられています。

1.高齢者の足の確保

高齢化が進む中で、運転免許を自主返納する人が増えています。令和元年度には、全国で60万件以上の免許返納が行われており、高齢者の生活圏内で移動手段を確保するニーズが高まっています。

免許返納によって自動車に頼れなくなった高齢者が、買い物や通院、友人・知人との交流のための足を失わないよう、地域公共交通の充実を求める声が根強いのが現状です。

2.医療機関や学校へのアクセス維持

地方部では病院や学校が統廃合される傾向があり、地域住民がこれらの施設へ通うための交通手段の確保が困難になる懸念が強まっています。地域住民からは、「通院や通学が困難にならないよう交通手段を維持してほしい」という強い要望が出ています。

地域交通課題解消への取り組み:公共ライドシェア

地域交通課題解消の取り組みとして公共ライドシェアがあげられます。

公共ライドシェア(自家用有償旅客運送)は、2006年に創設された制度で、交通空白地など公共交通が不便な地域における移動手段の確保を目的に、市町村などが主体となって運営されています。近年、タクシー運転手不足や人口減少を背景に、地域交通を補完する手段として再び注目されています。

国は2023年末から2024年にかけて制度を見直し、タクシーが運行していない時間帯での利用を可能にしたほか、料金上限の引き上げなどを行いました。その結果、導入自治体は急増し、20243月時点で645自治体、全国の約37%にまで広がっています。

一方で、導入が進んでいるように見えるものの、運行時間や日数が限られている、ドライバー確保が難しいなどの理由から、住民の日常的な移動を十分に支えきれていない地域も少なくありません。自治体の負担も大きく、制度を導入しただけでは地域交通の根本的な課題解決には至っていないのが実情です。

今後は、公共ライドシェアの導入数だけで評価するのではなく、地域の移動を実際にどこまで支えられているのかという視点で捉え、他の交通施策と組み合わせた取り組みが求められています。

日本ではライドシェアは公共ライドシェアと、タクシー不足を補完する日本版ライドシェアの2種類があります。ライドシェアについて詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。

スマートシティ構想

スマートシティとは、ICT(情報通信技術)やAIなどの先端技術を活用し、交通データの可視化や最適制御を通じて渋滞緩和や安全性向上といった交通課題に対応しながら、環境・防災・高齢化などの社会課題の解決を目指す、持続可能で快適な都市づくりの構想です。

スマートシティとは、情報通信技術やデータを活用し、都市運営の効率化や住民の生活の質向上を図る都市の姿を指します。自動運転は、その実現を支える中核的な技術の一つです。自動運転車の活用により、交通流の最適化や事故リスクの低減が期待されるほか、公共交通との連携による移動の効率化や、高齢者をはじめとする多様な人々の移動手段の確保にもつながります。こうした自動運転技術の進展は、安全で持続可能な交通システムの構築を通じて、スマートシティの実現を力強く後押しします。ジオテクノロジーズではMapFan ADASというADASに利用可能なSDマップよりも詳しい地図データを整備中です。MapFan ADASがどのように交通事故削減に役立つか興味のある方はこちらの資料をご覧ください。

自動運転(AD)とは

自動運転のレベル分け

現在、自動運転技術は搭載される機能や人の関与度合いに応じて、「レベル0」から「レベル5」までの6段階に分類されています。このレベル分けは、自動車がどこまで運転操作を担うのかを示す国際的な指標です。

自動運転(AD)と先進運転支援システム(ADAS)の違い

自動運転車が事故を起こした場合、「誰が責任を負うのか」は重要な論点です。この責任の所在は、自動運転レベル2とレベル3を境に明確に区分されています。

レベル2までは「運転支援」と位置づけられ、運転の主体はあくまでドライバーです。そのため、事故が発生した場合の責任は運転者が負います。

一方、レベル3以上では自動車が主体となって運転を行う「自動運転」として扱われ、一定条件下では事故時の責任が車両側に移るとされています。

「レベル2強化」が主流となっている現実

現在、日本国内で市販されている車両の多くに搭載されているのは、レベル2までの運転支援技術、すなわちADASです。これらは加速・減速や操舵を補助する機能を備えていますが、あくまでもドライバーの運転を支える役割にとどまります。

そのため、現状のADASでは事故時の最終的な責任はドライバーにあり、完全な自動運転とは言えません。レベル3となると自動車が主体となって運転を行う、つまり事故が起きた場合自動車が事故の責任を負うことになります。自動車が事故の責任を負う場合、自動運転の自動車を提供している企業が責任を負わなくてはならない可能性があります。こうした背景から、各メーカーはレベル3に到達する前段階として「レベル2の高度化(レベル2+)」を進めているのが実情です。

技術面・法制度面・社会受容性など、レベル3以上の自動運転には多くの課題が存在します。それでもなお、国や自動車メーカーはこれらの課題解決に取り組みながら、より高度な自動運転の実現に向けた開発を継続しています。

自動運転と地図の関係性

自動運転と地図の関係については、かつて「地図は必ずしも必要ではない」とされた時期がありました。しかし現在では、遮蔽物によってLiDARやカメラでは認識できない信号機や、進行方向にある複雑な分岐構造を事前に把握するための手段として、地図が不可欠であるという認識へと変わりつつあります。

また、LiDARやカメラから取得される膨大な情報をすべて一から処理する場合、計算処理に大きな負荷がかかります。そこで、地図を事前情報として活用することで認識や判断を効率化し、計算負荷を軽減する手法が現在の自動運転システムでは主流となっています。
AD/ADASの開発にはシミュレーションが欠かせません。ジオテクノロジーズではシミュレーションに利用可能なOpenDRIVE形式の地図データや人流データを保有しています。OpenDRIVE形式のデータに興味がある方はこちらの資料をご確認ください。

公共交通への自動運転の取り組み事例

<毛呂山町スマートシティ先行モデル事例>

毛呂山町では、人口減少時代においても行政サービスの持続的な提供と暮らしやすさの向上を実現するため、既存産業や公共サービスに対してICT技術をはじめとする先端技術の積極的な導入を進めています。

本計画では、自動運転バスの社会実装や自動運転ドローンを活用した農業支援、デジタルガバメントの推進、既存産業における技術の世代交代を通じた新産業の集積を目指しています。なかでも自動運転バスは、公共交通が整備されていないニュータウンと最寄り駅を結ぶ交通手段としての運行を予定しています。

これに先立ち、2019年12月にはLPWA(Low Power Wide Area)通信を活用したバスロケーションシステムの実証実験を開始し、2020年3月には11人乗りの自動運転バスによる実証走行を実施しました。往復約2.6キロメートルの公道を走行するなど、実用化に向けた検証を重ねています。

<参考>
https://www.mlit.go.jp/scpf/projects/docs/smartcityproject_mlit(1)%2005_moroyama.pdf

 

<ウーブン・シティへの取り組み紹介(トヨタ自動車)

実証実験の街として開発が進められている「ウーブン・シティ」では、今後、実際に暮らす人々も参加しながら、さまざまな新しい技術の検証が行われる予定です。

① 3種類の地上道路

ウーブン・シティの地上の道は、用途に応じて3つに分けて設計されています。

一つ目は、人だけが安心して歩ける「歩行者専用の道」。

二つ目は、電動車椅子や小型の電動モビリティが、人と同じくらいのスピードで一緒に走る「共存する道」。

三つ目は、自動運転EVe-Palette」などの自動運転車だけが走る「モビリティ専用の道」です。

これらは、従来の歩道と車道を分ける考え方とは異なり、これからの移動手段に合わせて設計された新しい道路の形です。

 

② 自動運転EV e-Paletteを活用した新しいサービスの検証

自動運転EVe-Palette」を公共交通(小型バス)として走らせ、公道に近い実験都市であるウーブン・シティで本格的な自動運転の実証実験を行っていくことになります。自動運転技術のステップアップが期待できます。詳しくは後述するウーブン・シティ自動運転バスの取り組みの項を参考にしてください。

また、多目的に使える自動運転EV「e-Palette」を活用し、移動だけでなく、飲食やエンターテインメントを提供する“動くサービス拠点”としての実証も行われます。実際に報道向けの見学会では、e-Paletteをキッチンカーとして使い、コーヒーを提供する取り組みも行われました。今後、さまざまな場面での活用が期待されています。

 

③ 地下の道

ウーブン・シティには、地上だけでなく「地下の道」も整備されます。天候や気温に左右されにくい環境で実証を行うためのもので、第1期エリアのすべての建物につながっています。全長約400メートルの地下通路を物流ロボットが走り、郵便物や宅配便を自動で各家庭に届ける仕組みが想定されています。

 

④ 信号のしくみ

自動運転車と連動して、信号の切り替えを自動で調整するシステムも導入予定です。車が近づくと信号が青に変わるなど、歩行者と車の双方が安全でスムーズに移動できる環境づくりを目指しています。

 

⑤ 多機能ポール

街路灯や信号柱の役割に加え、センサーやカメラなどを取り付けられる多機能ポールが設置され、街の様子を把握するための実証に活用されます。この多目的ポールから得た情報を使い、自動運転車と情報を共有することで、安全性の精度を高めていくことも期待できます。

 

⑥ 新しいモビリティやロボットの実証

電動小型モビリティのシェアサービスや、ロボットによる車の自動搬送なども検証予定です。また、「人に寄り添うロボット」をコンセプトとした「cocomo(ココモ)」の導入も決まっており、暮らしを支えるロボットの活躍が期待されています。

参考:トヨタ自動車


ウーブン・シティ自動運転バスの取り組み

ウーブン・シティ内の移動には、トヨタの多目的EV「e-Palette」が活用されています。通常、居住者を乗せて走行する際はドライバーによる手動運転が行われていますが、別途、自動運転に関する実証実験も進められています。

街の道路では、e-Paletteと信号機が情報をやり取りする実験が行われており、車両の接近や歩行者の状況に応じて信号を柔軟に制御する仕組みが検証されています。これにより、移動の安全性を確保しながら、交通の流れをスムーズにすることを目指しています。

こうした信号機は、センサーやカメラを備えた多機能ポールに組み込まれており、街のさまざまな場所に設置されています。今後は、自動運転だけでなく、新しい交通インフラや都市機能のテストも想定されており、設定を変更しながら継続的な実証が行われる予定です。

ウーブン・シティでは、実際の街の中でモビリティとインフラが連携する仕組みを検証することで、将来のスマートシティ実現に向けた知見の蓄積が進められています。

<参考>TOYOTA WOVEN CIYT トヨタ自動車 e-Palette

ジオテクノロジーズでは各地域の事情に合わせて必要になる情報をユーザー投稿型サービスで集めることができます。(サービス名:ジオクエ)。ユーザー投稿型サービス ジオクエに興味がある方はこちらのサイトをご覧ください。

人口減少に伴い、各地域では生活様式が大きく変化しており、特に公共交通への影響が顕在化しています。地域の人々が円滑に移動し続けるためには、従来の仕組みに加え、新たなテクノロジーの導入が不可欠です。その解決策の一つとして注目されているのが自動運転です。

バスやタクシーに自動運転技術が導入され、人が自由に移動できる環境が整えば、住民の利便性向上に加え、観光地での移動の円滑化や地域経済の活性化も期待されます。

こうした課題は過疎地域に限ったものではなく、東京や神奈川といった都市部においても、ドライバー不足は深刻な問題となっています。その対策の一環として、東京都では自動運転レベル2の実証実験を開始することが発表されており、自動運転への期待は全国的に高まりつつあります。
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