公開日:2026.02.16 更新日:2026.02.24

【GTタイムズ#3】40億枚の走行画像が生み出す、地図と社会インフラの未来

X Facebook LinkedIn

「走行画像」が、単なるドライブの記録ではなく、社会インフラを支える「生きたデータ」となっていることをご存知でしょうか?道路標識、建物、路面の状態——これらの画像は、単なる「風景画」にとどまりません。
当社が20年かけて蓄積した走行画像は40億枚。当初は地図制作のために収集していましたが、いまではAI技術と組み合わせることで、地図整備の効率化、歩道の安全性評価、自動運転技術の開発など、幅広い分野で活用されています。
実際にどのように撮影され、どんな技術で解析され、どのような成果を生んでいるのか。本記事では、走行画像の全貌を事例とともにご紹介します。

道路走行画像データに興味のある方はこちらからお問い合わせください。

1 走行画像って何?

走行画像とは、文字通り「自動車が走行しながら撮影した道路とその周辺の風景画像」のことです。道路の状況、交差点、標識、建物など、街の様子をありのままに記録しています。
当社は、主にデジタル地図の整備を目的として走行画像を収集・活用してきました。20年間にわたり蓄積してきた走行画像は、累計40億枚にのぼります。
その活用範囲は地図制作にとどまらず、路面状態の調査、都市計画、そして自動運転技術の開発など、幅広い分野に広がっています。

走行画像の最大の特徴は、単なる静止画ではないという点にあります。それぞれの画像には「いつ」「どこで」「どのような状況で」撮影されたのかという情報——位置情報や時間情報、撮影方向などのメタデータ——が付加されています。この情報があるからこそ、膨大な画像の中から必要なデータを瞬時に検索したり、時系列で変化を追跡したりすることができるのです。
今では地図データベースの整備という当初の目的を超えて、社会インフラを支える貴重なデータとして様々な業界から注目を集めています。

2 走行画像を支える裏側:撮影・収集の仕組み

当社では、専用カメラを搭載した自動車を実際に走らせて、走行画像を撮影・収集しています。

・撮影方法
自動車の前方・後方に設置された専用カメラで、5m間隔ごとに撮影を行います。このとき、すべての画像には正確な位置情報が同時に記録されるため、後から「この画像はどこで撮影されたものか」を正確に特定できます。

・画像品質
撮影は朝から夕方までの明るい時間帯に限定して実施し、品質を保っています。雨天時や日没後では画質が低下し、道路標識や路面状況の判別が困難になるためです。クリアで鮮明な画像を取得することが、データの価値を左右します。

・更新頻度
道路の種類や重要度に応じて数年おきに更新しています。例えば、新しく開通した道路については開通から1年以内を目安に調査を実施します。高速道路や自動車専用道路は年1回の頻度で定期更新を行い、都市部の道路や郊外の道路についてはそれぞれサイクルを分けて周期的に走行しています。

・プライバシー保護
走行画像に映り込む個人情報(人物の顔や車両ナンバープレート)には、プライバシー処理も可能です。安心してデータを活用できる環境が整えられています。

 

3 AIが引き出す走行画像の隠れた価値

走行画像の真価は、AI技術と組み合わせることで最大限に発揮されます。
道路標識、看板、案内表示、構造物などが豊富に写り込んだ大量の画像データを物体検出や画像認識モデルの教師データとして活用できます。「これは標識」「これは看板」とAIに学習させることで、自動認識システムを構築でき、看板位置認識や道路損傷の自動検出などに応用が可能となります。

また、道路の舗装劣化やひび割れ箇所を画像から自動で検出するAIモデルの構築により、人間の目視では膨大な時間がかかる道路点検作業を効率化し、予防保全型の道路管理に貢献します。さらに、多様な道路環境や天候条件下での画像データを学習させることで、より安全で信頼性の高い自動運転システムの開発にも役立ちます。

4 【事例】走行画像で街の安全を守る

実際に走行画像を活用した事例をご紹介します。

事例1:AIを活用したポットホール自動検出
道路の老朽化によるポットホール(穴ぼこ)は、車両事故や歩行者の転倒リスクを引き起こします。当社が盛岡市と実施した実証実験では、調査車両に設置したカメラで路面を撮影し、AIがポットホールを自動検出。その位置を地図上に可視化する仕組みを構築しました。

実証実験の結果、道路敷設から10~30年の地区では1kmあたり2.2個、約50年経過した地区では1kmあたり6.6個と約3倍のポットホールが発生していることが判明しました。

事例2:歩道の安全性評価
登下校中の児童を巻き込む痛ましい事故が発生するたびに安全点検が行われていますが、通学路での交通事故は依然としてなくなっていません。当社では走行画像を活用し、AI技術による歩道の安全性評価に取り組んでいます。40億枚の画像から様々なシーンを抽出し学習した結果、様々な状況の歩道、ガードレール、段差の有無などの要素から安全性を4段階で評価しました。認識精度は97%に達しており、単に歩道やガードレールの認識だけではなく、車両の落下防止か歩行者保護を目的としたガードレールなのかを正しく認識出来る事を確認しています。

これらのデータにより、教育機関や保護者は通学路の安全性確認や危険箇所の特定ができ、自治体はデータに基づく効率的な都市計画への活用が可能になります。
当社では、将来的に人流データを活用し、全国網羅的な歩道の安全性評価マップを作成していく予定です。

5 走行画像が支える高精度地図と新たな可能性

走行画像とAI技術の融合は、当社の地図整備にも大きな変革をもたらしています。
道路標識や交差点情報といった地図に必要な要素を、走行画像から自動的に抽出することで、高精度なデジタル地図の制作を実現。従来は人手に頼っていた作業が自動化され、更新スピードと精度が飛躍的に向上しました。

さらに、走行画像と当社の地図データベース「MapFan DB」を連携させることで、新しい活用の可能性が広がります。

MapFan DBに含まれる道路情報に走行画像を紐づけることで、道路分析やルート探索の研究開発が可能になります。たとえば、走行画像から「人工物が多い都市景観」「森林や海が見える自然景観」「田園風景が続く郊外路」といったシーンごとの景観を分類し分析することで、各ルートにどういった景観がどの程度見られるのかを把握できます。この技術を応用すれば、「景色のよいドライブルート」や「開放感のある道を優先したルート」など、ユーザーのニーズに応じた新しいルート探索サービスの開発や観光客への新たな観光ルートの提案へと発展させることができます。

20年かけて蓄積した40億枚の走行画像。このデータ資産を活用し、当社はこれからも、より便利で安全な社会の実現に貢献してまいります。

法人向けサービスに関するお問
い合わせはこちらから

関連記事

資料請求やサービス
に関する説明のご依頼は、
下記フォームよりお気軽にご連絡ください